今季2024年より、FIA国際自動車連盟がGT3マシンへの装着を義務付けたトルクセンサーについて、複数のメーカーの経営陣はこれに納得していない。トルクセンサーはWEC世界耐久選手権の2021年シーズンからハイパーカークラスに導入され、今季開幕戦カタールからはGT3マシンにも搭載されている。

 このセンサーは今年からスタートした新クラス“LMGT3”に参戦する9車種、計18台のマシンのドライブシャフトに取り付けられており、シリーズのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)によって定められたパワーを測定し、より適切に制御することを目的としている。

 同様のシステムはELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズのLMGT3クラスでも導入される予定となっており、北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権では2025年から、GT3カーを用いるGTDプロとGTDの両カテゴリーでトルクセンサーを使用する計画を明らかにしている。

 業界の重鎮たちは、異なるタイプのエンジンとマシンの性能を効率的にバランスさせることができるこのシステムを高く評価しているが、GT3チャンピオンシップでのさらなる普及については恐れている面もあるようだ。その価格は6〜8万ドル程度(約880万〜1180万円)となっており、チームはマシン1台につき複数のユニットを購入する必要があることをSportscar365は理解している。

 ランボルギーニのチーフテクニカルオフィサーであるルーベン・モールは、「これはちょっとしたリスクだ」と語る。

「トルクセンサー自体については大いに賛成だ。とくに自然吸気エンジンとターボエンジンのバランスを取りたい時など、エンジンパワーの面で正しくバランスを取れる唯一の方法だと考えている。したがって、私はこのシステムをとても評価しているんだ」

「しかし、この事実だけでなく、GT3カテゴリーでは絶対的なプロフェショナリズムの向上が見られ、結果としてコストも増加していくだろう」

 ランボルギーニ・モータースポーツ代表のジョルジオ・サンナは、「これは非常に高価なものであり、我々が管理しなければならないことだ。なぜなら、メーカー、プロモーター、チームが一丸となって、コストの増加に対処し、数年後にGT3がGTEのようなものになってしまうのを避けなければならないからだ」と付け加えた。

 ゼネラルモーターズ(GM)のスポーツカー・レーシング・プログラム・マネージャーであるローラ・ウォントロップ・クラウザーは、「少々値が張るが、これはそういうものだ。タダでは何も手に入らないのだから」と述べる。

■カスタマーチームにとってのリスクとコストの懸念も

 一方、BMWでモータースポーツ・ディレクターを務めるアンドレアス・ルースは、すべてのGT3シリーズにセンサーを導入すべきだとは考えていないと、より明確な立場を示している。

「チーム側にも、メーカー側にも、余分なコストと労力がかかる。だから結局、WECやLMGT3ではその理由が分かるが、GT3では世界的に可能だとは思えない。私にとっては解決策ではない」

 ルースはさらにこう付け加えた。「これはGT3レースの新しいスタンダードにはなり得ない」

「それは不可能だし、我々はこんなことはできない。最終的に多くのカスタマーがレースから去ってしまう危険性があるからだ」

「GT3がファクトリー主導になりすぎないように注意しなければならない」

 WECのLMGT3クラスでシボレー・コルベットZ06 GT3.Rを走らせるTFスポーツのチーム代表、トム・フェリエは、同様にこのシステムの利点を称賛しながらも、「もっと安価な方法があればいいのだが」と私見を述べた。さらに彼は、レース中のセンサーの故障という別の懸念についても指摘している。

 ハイパーカーチームのTOYOTA GAZOO Racingは、2023年のポルティマオ6時間でこの問題に遭遇し、オレンジディスク旗を振られたためピットインを余儀なくされた。日本チームはドライブシャフトを交換する必要に見舞われ、チームは7周ものロスを喫することとなった。

 フェリエはSportscar365に対し「それは僕にとっては恐怖の方が大きい」と語った。

「ハイパーカーを見ると、彼らはファクトリー出資のチームであることを実感する。カスタマーレースとしてそれを始めると、ジェントルマンドライバーたちがそのドライブシャフト交換を行うこととなり、事実上レースを終わらせなければならない」

「もっといい方法があるのか、バックアップがあるのか、あるいはそうならないための何かがあるのか。私たちはその懸念を示した。それについてどのようなフィードバックがあるのか見てみよう」