4月14日、イタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ(ミサノ)にて2023/2024年ABB FIAフォーミュラE世界選手権第7戦ミサノE-Prixが行われ、ニッサン・フォーミュラEチームのオリバー・ローランドが首位で最終ラップに入るもエネルギー切れで失速し、逆転でパスカル・ウェーレイン(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)がレース1での接触による雪辱を果たす今季2勝目を飾った。

 前日に行われた第6戦では、トップチェッカーを受けたアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)がレース後にマシン違反で失格となり、ニッサン・フォーミュラEチームにとって初金星となるオリバー・ローランドの勝利が飾られたミサノE-Prix。ダブルヘッダーとして行われるレース2は、午前中のデュエル予選にてネオム・マクラーレン・フォーミュラEチームのジェイク・ヒューズが自身3度目のポールポジションを獲得した。

 迎えたレース2は、レース1よりも2周少ない26周となり、ポールポジションのヒューズを先頭にスタートが切られる。

 この日も前日のレース1で見られたような順位変動の激しい展開となり、首位は各ラップごとに目まぐるしく変わっていったが、上位勢は早々に2回のアタックモードを使い切る戦略に切り替えてきた。

 舞台となるミサノは、普段フォーミュラEが主戦場としている市街地サーキットに比べて、コース幅も広く長いストレートも多いことからエネルギーマネジメントに厳しいレイアウトだ。公式放送の情報によれば、スリップストリームを使用して1周を走った場合は0.8%のエネルギー節約になるとのことで、レース1では約2%の差が終盤のペースを分けたことを考えるとポジション取りはこのレースの大きなカギとなる。

 レース開始直後からペースを上げて先頭集団を形成したのは、ウェーレイン、ニック・キャシディ(ジャガーTCSレーシング)、ニコ・ミューラー(ABTクプラフォーミュラEチーム)、ジェイク・ヒューズ(ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)、オリバー・ローランド(ニッサン・フォーミュラEチーム)、ジェイク・デニス(アンドレッティ・フォーミュラE)の6台だ。

 序盤でアタックモードの使用義務を果たした6台は、スリップストリームの奪い合いとなり、もっともロスの多い先頭を長く走ったのはローランドとなった。一方他車の影でうまく周回を重ねたのはウェーレインとキャシディのふたりで、レース終盤を前にウェーレインは近くのライバルに対し約2%、キャシディは約3%多くエネルギーをキープすることに成功する。

 残り周回数が少なくなってくると各車は徐々にペースを上げていき、首位のローランドはギャップを広げるスパートをかけ始めた。2番手にはウェーレイン、3番手にはデニスが約1秒の差で続き、すぐ後方ではミューラーとキャシディは僅差で4番手を争う。

 迎えた最終ラップでは、約1.5秒のリードを築いていたローランドがセクター1でまさかの失速。バッテリー残量が保たず、マシンは無情にも停止してしまった。ウェーレイン、デニスの順にローランドの横を抜けて行き、そのまま難なくチェッカーを受けた。

 デニスの後方でミューラーとキャシディが繰り広げていたバトルは表彰台争いとなり、最終コーナーからの立ち上がりで半身前に出たキャシディに軍配が上がった。

 ローランドはレース後の公式インタビューにて「スタート時の不具合で、コントロールラインを通過したときに1周をカウントしてしまったようだ。僕はその後、残り周回数を1周少なく見積もったままレースを戦っていたんだ」と、“電欠”の原因を振り返っている。

 前日のレース1は接触によって順位を下げてしまったが、その雪辱を果たしたウェーレインは、今季2勝目を挙げたことでポイントランキングトップに再浮上。同ポイントの2位には2戦連続表彰台のデニスがつけ、9点差の3位はローランド、さらに4点差の4位はキャシディとなっている。

 ハイスピードなサーキットでの開催とあって、普段の公道レースとは異なる2レースが繰り広げられたミサノE-Prixはレース後の失格や“電欠”による劇的な幕切れでの終幕となった。次回大会は、モナコ公国で行われる第8戦モナコE-Prix。4月27日(土)に同国市街地の特設サーキットにて開催される予定だ。


■第7戦順位結果および各ランキング

■2023/24年フォーミュラE第7戦ミサノE-Prix 順位結果
Pos.No.DriverTeamTime/GapsGrid194P.ウェーレインタグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム37’05.241321J.デニスアンドレッティ・フォーミュラE1.9339337N.キャシディジャガーTCSレーシング2.2218451N.ミューラーABTクプラフォーミュラEチーム2.2714523S.フェネストラズニッサン・フォーミュラEチーム5.2301363S.セッテ・カマラERTフォーミュラEチーム5.72711725J-E.ベルニュDSペンスキー6.794285J.ヒューズネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム8.236197M.ギュンターマセラティMSGレーシング8.387121018J.ダルバラマセラティMSGレーシング8.71421118S.バードネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム11.91251211L.ディ・グラッシABTクプラフォーミュラEチーム12.415141348E.モルタラマヒンドラ・レーシング14.171191433D.ティクトゥムERTフォーミュラEチーム17.875181521N.デ・フリースマヒンドラ・レーシング21.935201617N.ナトアンドレッティ・フォーミュラE1Lap161713A.F.ダ・コスタタグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム1Lap2209M.エバンスジャガーTCSレーシングDNF15022O.ローランドニッサン・フォーミュラEチームDNF1002S.バンドーンDSペンスキーDNF6016S.ブエミエンビジョン・レーシングDNF1704R.フラインスエンビジョン・レーシングDNF7

■2023/24年フォーミュラE ドライバーズランキング(第7戦ミサノE-Prix終了時点)
Pos.No.DriverTeamPoint194パスカル・ウェーレインタグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム8921ジェイク・デニスアンドレッティ・フォーミュラE89322オリバー・ローランドニッサン・フォーミュラEチーム80437ニック・キャシディジャガーTCSレーシング7657マキシミリアン・ギュンターマセラティMSGレーシング65625ジャン-エリック・ベルニュDSペンスキー5379ミッチ・エバンスジャガーTCSレーシング5288サム・バードネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム3795ジェイク・ヒューズネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム251017ノルマン・ナトアンドレッティ・フォーミュラE23112ストフェル・バンドーンDSペンスキー22124ロビン・フラインスエンビジョン・レーシング211316セバスチャン・ブエミエンビジョン・レーシング201413アントニオ・フェリックス・ダ・コスタタグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム201523サッシャ・フェネストラズニッサン・フォーミュラEチーム201651ニコ・ミューラーABTクプラフォーミュラEチーム181733ダン・ティクトゥムERTフォーミュラEチーム12183セルジオ・セッテ・カマラERTフォーミュラEチーム111911ルーカス・ディ・グラッシABTクプラフォーミュラEチーム12018ユアン・ダルバラマセラティMSGレーシング12148エドアルド・モルタラマヒンドラ・レーシング02221ニック・デ・フリースマヒンドラ・レーシング0

■2023/24年フォーミュラE チームランキング(第7戦ミサノE-Prix終了時点)
Pos.TeamPoint1ジャガーTCSレーシング1282アンドレッティ・フォーミュラE1123タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム1094ニッサン・フォーミュラEチーム1005DSペンスキー756マセラティMSGレーシング657ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム638エンビジョン・レーシング419ABTクプラフォーミュラEチーム2310ERTフォーミュラEチーム1911マヒンドラ・レーシング0

■2023/24年フォーミュラE マニュファクチャラーズ・トロフィー(第7戦ミサノE-Prix終了時点)
Pos.ManufacturerPoint1ポルシェ1902ジャガー1573ニッサン1544ステランティス1285ERT236マヒンドラ19
※編集部集計