日大1回戦で児玉が完封



試合後、投打のヒーロー2人が笑顔でポーズ。左から西川、児玉[写真=矢野寿明]

【5月15日】東都大学一部(神宮)
青学大1-0日大(青学大1勝)

 投打の中心選手が活躍し「スミ1」で、見事に逃げ切った。

 青学大が開幕7連勝で迎えた日大1回戦。1回表二死二塁から四番・西川史礁(4年・龍谷大平安高)が、先制左前適時打を放った。この1点を先発の左腕・児玉悠紀(4年・日大三高)が守り切り、初完投を初完封で飾った。被安打4の無四球と、圧巻の投球内容である。これで、チームは無傷の開幕8連勝で、3季連続優勝へ大きく前進した。

 児玉は開幕から4戦4勝で28回2/3を無失点と快投を続けている。昨秋までリーグ戦通算3勝の左腕が、大きく飛躍した理由は何か。

「危機感」に尽きる。

 青学大は昨年、東都大学リーグで春秋連覇を遂げた。6月の全日本大学選手権では18年ぶり5度目の日本一を遂げ、11月の明治神宮大会は準優勝。年間タイトル4冠まであと一歩届かなかったが「強豪復活」を印象づける1年となった。投手の原動力となったのは常廣羽也斗(広島)と下村海翔(阪神)の両輪に、松井大輔(NTT西日本)もブルペンに控えていた。最上級生が卒業。2024年の次期エースとして託されたのが、児玉だった。

「昨年はあれだけ強いと言われていて、この春のリーグ戦が始まるときはすごく不安がありましたが、一人ひとりがやるべきことをやってきたからこその8連勝なので、これからも気を抜かずにやっていきたいと思います」


青学大の左腕・児玉はリーグ戦初完投を完封で今季4勝目を挙げた[写真=矢野寿明]

 中西聖輝(3年・智弁和歌山高)、鈴木泰成(2年・東海大菅生高)の右腕2人に、左腕では渡辺光羽(3年・金沢学院大付高)、ヴァデルナ・ファルガス(3年・日本航空高)が持ち味を発揮。8試合で6失点と、盤石の戦いを続けている。安藤寧則監督が全幅の信頼を寄せる、中野真博コーチの投手指導に尽きる。社会人野球・東芝でのコーチ実績があり、個々の能力に合わせたアプローチ。「投手王国」を築いている。

「児玉を中心に、全員で守り勝ったと思います」。安藤監督は、手応えを語る。昨年11月の明治神宮大会決勝(対慶大)では、2つの失策があり、0対2で惜敗した。以来、新チームでは、ディフェンス強化を掲げてきた。1年春から正捕手の渡部海(22年・智弁和歌山高)を軸に、崩れることはない。

気遣いの主砲



1回表二死二塁から四番・西川が左前先制適時打。この一打が決勝点となった[写真=矢野寿明]

 打線は四番・西川が絶対的な存在感を示している。5月15日現在、打率.400(30打数12安打)はリーグトップで、効果的な打点(計7打点)が多い。3月には井端弘和監督が指揮する侍ジャパントップチームに招集され、欧州代表との強化試合では攻守で活躍した。

「限られた人しか経験できない舞台に立たせていただいて、その貴重な経験をムダにせず、これからもチームに貢献できるように生かしていきたい」。頼もしいコメントが聞かれる。

 西川の好調の秘訣は、豊富な練習量にある。昨春は打率.364、3本塁打、10打点でMVPを受賞したが、秋は打率.213、1本塁打、5打点とやや苦しんだ。自身で数字が残せなかった原因を突き詰めた結果、秋開幕までのトレーニング不足と結論づけた。冬場は1年間、持続できる体力強化に取り組んだ。自身のバットで試合を決めているが「ピッチャーが頑張って抑えているので、自分がここ(取材場所)に立っているだけです」と、投手陣への感謝を忘れない、気遣いの主砲である。

 中大が亜大2回戦で連敗し、青学大が日大2回戦で連勝すれば、リーグ3連覇が決まる。ただ、何が起こるか分からないのが「戦国・東都」の厳しさである。安藤監督は最後の勝利のアウト一つを取るまで「石橋を叩いて渡る」慎重な指揮官である。