株式市場が活況を呈している。3月4日には、取引時間中の史上最高値となる4万円の大台を突破した。2月22日には日経平均株価は最高値をおよそ34年ぶりに更新しており、笑いがとまらない個人投資家も多いはずだ。

そんな市場の浮かれムードとは反対に、夫婦仲が低迷する個人投資家にとっては、冷や冷やな相場かもしれない。弁護士ドットコムには離婚、別居を考える人たちから次のような相談が寄せられている。

・「夫の不貞行為により、離婚を検討しています。子どもと自分の将来のためにも投資を始めようと取っているのですが離婚前に始めてしまうと財産分与の対象になりますか?」

・「子ども名義の株は分与対象外となりますか?」

・「婚姻前からの預金を原資とした株式評価益についても財産分与の対象とされますか?」

相談を寄せた一人は、「運用は自分なりに研究して、また運用リスクも担った上で形成しました。何も貢献せずに分与を主張するのは納得いかない」と吐露しています。

ネットでは「株式投資でFIREを目指す!」と息巻く人たちも多い。離婚の財産分与で株式はどう処理されるのだろうか。離婚や男女問題に詳しい山本明生弁護士に聞いた。

●株式も財産分与の対象となる?

——株式も財産分与の対象となるのでしょうか

婚姻期間中に築いた財産は、実質的に夫婦共有財産となることから、離婚時にその清算をするのが財産分与の趣旨です。

原則として、婚姻期間中に夫婦のいずれかが株式を購入した場合には、その株式は財産分与の対象となります。また、子ども名義であっても実質的に夫婦に帰属しているといえるのであれば財産分与の対象になります。

——財産分与の対象となるのは、いつの時点の株式なのでしょうか

財産分与の対象となるのは、離婚時(別居が先行する場合は別居時)に有している株式です。

その株式の評価は離婚時(口頭弁論終結時・審理終結時)の評価額とするのが通常です。但し、別居時と離婚時との株式の価格が大幅に変動していた場合に、例外的に両時点の平均額を評価額とした裁判例もあります。

——「婚姻前からの預金を原資とした株式評価益についても財産分与の対象とされますか?」という質問もありました

婚姻前からの預金を原資とした場合には「特有財産」(夫婦が協力して築いたのではなく、一方が形成した財産)ということになり、財産分与の対象にはなりません。

「自分なりに研究して運用していたことから、財産分与に納得できない」との相談については、特有財産でない限り、財産分与の対象となります。もっとも、その研究運用の態様が現在の価値に影響を与えていることが明らかな場合には、その寄与度に応じて分与割合に影響を及ぼす可能性はあるかもしれません。

【取材協力弁護士】
山本 明生(やまもと・あきお)弁護士
大阪弁護士会所属。交通事故被害(死亡事故、重度後遺障害案件を含む)、相続、離婚など個人をとりまく身近なトラブルを多く扱っている。「話しやすく、分かりやすい弁護士であるべき」との信念に基づき日々活動している。
事務所名:山本明生法律事務所
事務所URL:https://akioyamamoto-law-office.jp/