ディディことパフ・ダディによる盟友の追悼曲にして一斉を風靡した歴史的ヒット曲「I'll Be Missing You」

ディディことパフ・ダディが盟友ノトーリアス・B.I.G.に捧げ、史上最も売れたシングルのひとつと言われる追悼曲「I'll Be Missing You」のMVにはスズキのGSX-R1100と思われるバイクが登場します。

亡き友に捧げた名曲

　ディディことショーン・コムズにとって、2023年は激震の1年でした。パフ・ダディの名でも知られるこのラッパー／音楽プロデューサーは同年9月に6枚目となるフルアルバムをリリースし、今をときめく大物アーティストたちがこぞって参加。ビルボードのトップR&Bアルバム・チャートで初登場2位を記録したほか、5つのチャートでトップ10入りしています。

　しかし11月、R＆Bシンガーで元恋人のキャシーが彼を性的暴行と虐待で提訴。さらに1週間後、別の女性2人からも性的、身体的な暴力被害にあったと告発されてしまいます。ディディは無実を訴え、またキャシーとは早々に示談が成立したものの、なんとも後味の悪い状況が今も続いています。

　1993年に＜バッド・ボーイ・レコード＞を立ち上げたディディですが、1996〜1997年にかけて起こった2大ラッパー銃撃事件によって、同レーベルの稼ぎ頭であった“ビギー”ことノトーリアス・B.I.G.が死去。事件現場に居合わせていた彼はビギーの意志を継ぐかのように、名をパフ・ダディと改めラッパー／プロデューサーとして精力的に活動していきます。

　そんなディディの代表曲といえば、ビギーの妻フェイス・エヴァンスと112をフィーチャーした「I’ll Be Missing You（見つめていたい）」でしょう。そのタイトル通りビギーを追悼した同曲は、スティング率いるポリスのヒット曲「Every Breath You Take」（1983年）を印象的にサンプリングし、リバイバルヒットにも貢献しました。

　また同曲はグラミー賞で最優秀ラップパフォーマンスを受賞し、ビルボード＜Hot100＞チャートで11週間トップに君臨。アメリカだけで数百万枚の売上を記録しており、間違いなく史上最も売れたシングルのひとつでしょう。

　当時MTVなどではミュージックビデオもヘビーローテーションされていましたが、なんとディディ（当時はパフ・ダディ）は冒頭、大型バイクに乗って登場。おそらくスズキのGSX-R1100と思われますが、歌が始まる前にディディはバランスを崩し派手に転倒してしまうのです。

　その後、ディディが小高い丘の上で歌う演出は、まるであの世から現世を俯瞰しているかのよう。最悪の形でこの世を去ってしまったビギーへの追悼であることは一目瞭然であり、まるで“自分もいつ死んでもおかしくない”と謳っているかのようで、どこか醒めたような視点も感じられる印象的なミュージックビデオです。