日本テレビ系の「 金曜ロードショー 」で4月5日午後9時に、新海誠監督の最新作『 すずめの戸締まり 』が地上波初放送。
主人公の少女の名前は、岩戸鈴芽(いわと・すずめ)。この一風変わった名前、鳥のスズメから来ているかと思いきや、そうではありません。新海監督のインタビューから由来を探ってみましょう。

『すずめの戸締まり』 DVD スタンダード・エディション(Amazon)

鈴芽の由来は日本神話の女神「アメノウズメノミコト」だった

2022年11月の劇場公開時の入場者プレゼントだった小冊子「新海誠本」。そこには新海監督のインタビューが掲載されていました。主人公の名前の由来は、日本神話に出てくる女神「 アメノウズメノミコト 」だと明かしていました。
🗣️「名前の直接のインスピレーションはアメノウズメノミコト(天細女命)でしたね」
🗣️「芸能の神様でしたよね。場所を悼むという発想がまずあって、最終的に扉を閉じていく話にたどり着いたんですが、そのアクションを行う主人公の名前で扉にちなんだアメノウズメノミコトの連想から、スズメ=鈴芽にしました」

「芸能の元祖」アメノウズメノミコトってどんな神様?

アメノウズメノミコトは、『古事記』では天宇受売命、『日本書紀』では天鈿女命と表記します。
「芸能の神様」として知られており、画家の小杉放菴さんは「 天のうづめの命 」という絵を、NHKの朝ドラ『 ブギウギ 』で話題の歌手・笠置シヅ子さんをモデルに描いたと 言われています 。
太陽を象徴する女神である天照大神(あまてらすおおみかみ)が、天岩戸(あまのいわと)と呼ばれる洞窟に隠れてしまったことで、神々の世界・高天原(たかまがはら)も地上も真っ暗になってしまいました。
神々は相談して、天照大神を外に出すために一計を案じました。洞窟の前で盛大な祭りを開き、神楽(かぐら)を演奏することにしたのです。

神楽が始まると、天宇受売命(あめのうずめのみこと)という女神が、洞窟の前にある樽(たる)の舞台で踊り出しました。『 新版 古事記 現代語訳付き 』(角川ソフィア文庫)では、『古事記』の文章を以下のように現代語訳しています。

「天の石屋の戸の前に桶をふせて踏み鳴らし、神が乗り移った状態で、乳房をあらわに取り出し、下衣の紐を陰部まで垂らしたのである。すると高天原が震動せんばかりに、八百万の神々がどっと笑った」
あまりの大騒ぎが気になった天照大神が洞窟から顔を出したことで、高天原も地上にも再び太陽の光が降りそそぐようになったということです。
平藤喜久子さんの『 日本の神様 解剖図鑑 』(エクスナレッジ)によると、アメノウズメノミコトの踊りは芸能の元祖と言われており、芸能関係者から現代も敬われているそうです。
扉を開けるのと、扉を閉じるというのは動きが逆ですが、扉に関わっている点では『すずめの戸締まり』の岩戸鈴芽に通じていますね。
しかし、太陽を復活させるためとはいえ、大勢の前で胸をはだけて太股まで露わにして踊りまくるとは、思い切った女神様ですね!
名前の由来になったとはいえ、『すずめの戸締まり』で鈴芽はそんなことをする描写はないのでどうかご安心を。

『すずめの戸締まり』アクリルスタンド「鈴芽」劇場公式グッズ(Amazon) / Via amazon.co.jp

小杉放菴さんが描いたアメノウズメの姿。鶴見俊輔さんの『アメノウズメ伝: 神話からのびてくる道』の表紙より(平凡社/Amazon)