「踏切&線路大好き!お蕎麦大好き!猫様大好き!」と、インスタの自己紹介欄がにぎやかな手塚理美さん。気が合いそうな人とは会っちゃう、っていうんだから行動派です!清純派の役柄が多かった手塚さんの意外な趣味の世界とSNSの縁。こういう使い方はステキです。(全4回中の3回)

フォロワーと食事に「本物ですか?」と聞かれることも

── Instagramでは、たくさんの趣味やお友だちとの交流を楽しむ様子がうかがえます。肩ひじを張らない自然体な姿と暮らしぶりがとても素敵ですが、そもそもInstagramを始めたきっかけは、なんだったのでしょうか?

手塚さん:もともとは、旅番組の『ミギカタアガリ旅行社』(テレビ東京系列)でInstagramを始めるという企画がきっかけでした。

私はアナログ人間なので、自分自身でInstagramを始めることには抵抗があったのですが、番組でご一緒した椿鬼奴さんが、「面白いし、世界が広がるからやってみましょうよ」とサポートしてくれたので、それならやってみようかなと。

どうせならお仕事以外を発信しようと思って、趣味を楽しむ様子を上げています。気の向いたときにのんびりやればいいやと思っていたのですが、いざ始めてみたら、いろんな方と交流するのが楽しくて、ずっと続いていますね。

── フォロワーの方(一般の方)とお友だちになって、一緒に食事をするなど、積極的に交流を楽しまれていますね。

手塚さん:コメントをいただいた方で波長が合いそうな方や、自分と感性が近いなと感じる方とは実際にお会いして、お友だちづきあいをさせていただいています。「ぜひ来てください」とコメントをもらって、遊びに行ったことも。

ただ、オフィシャルにしていないので、はじめは“なりすまし”だと勘違いされて、「本物ですか…?」と疑われました(笑)。

── そういう反応になるでしょうね(笑)。でも、芸能人の方で、ここまで垣根なくフレンドリーに交流をされる方は珍しいと思います。

手塚さん:もともと芸能界の方とのつき合いはほとんどなくて、プライベートで仲良くしているのも、子どもの幼稚園時代からのママ友が多いんです。

子どもが小さいころは、仕事に行くときに子どもを預かってもらって、戻ってきたら一緒に食卓を囲んだりと、本当にいろいろと助けてもらいました。30年来のおつき合いになりますが、いまもママ友たちとおしゃべりしているときが一番自分らしくいられるし、落ちつくんです。

じつは「踏切」「線路」マニアな一面も!

── 散歩や写真、蕎麦屋めぐりなど、いろいろな趣味をお持ちですが、昔から、アクティブなタイプだったのですか?

手塚さん:20代のころは仕事が忙しく、30〜40代は育児中心で自分の時間がほとんどなかったのですが、2人の息子も巣立ち、ようやく自分の時間が作れるようになりました。昔できなかったことを、いま、思いきり楽しんでいるところですね。

街歩きで散歩をするのがすごく好きだったので、そこで出合った風景を写真に撮ったり、気になる場所を調べてみたりと、どんどん趣味が広がっていきました。

── 気になったのが、「踏切」「線路」の写真です。

手塚さん:線路がどこまでも続いていく風景って、見ているだけでなんだかワクワクしませんか?多分、『小さな恋のメロディ』とか『スタンド・バイ・ミー』の映画の影響なのだと思いますが、ロマンを感じるんですよね。現実世界から離れて、空想が広がっていく感じがして。

実家近くのお気に入りの線路

昔、住んでいた場所がたまたま踏切の多いところだったんです。あるとき、線路の先をふと見てみたら、はるか彼方先に駅のホームが見えたんですね。その光景を見た瞬間、「すごい、面白い!」と感動して。

そこから興味がわいて、散歩をしながら踏切を見つけて写真を撮ったり、線路を見ながら物思いにふけったり。先日、インスタでお友だちになった方が熊本からいらしたので、2人で線路を見に行って大はしゃぎしていました。

── 線路や踏切の魅力は、なんでしょう?

手塚さん:田舎のローカル線で単線の線路が先まで続く光景や、無人駅の風情ある姿、廃線になった線路を見ながら歴史やロマンを感じたりするのが好きなんです。

踏切は場所によって様式もまったく違います!遮断機も片方だけのものもあれば、両側から降りてくるもの、大きさも大小さまざま。周りの風景も違いますし、音もそれぞれ違う。だから、見ていて飽きないんですよね。

鉄道には詳しくないけれど、田舎のローカル線の単線が好きなんです。田畑のなかを通っていたり、海沿いに沿って線路が続く風景は、見ているだけで心が癒やされます。

「踏切を感じる」ことができるのは心の余裕があるから

── そういう目で踏切を見たことがなかったので、新鮮です。朝、急いでいるときに踏切が開かないと、ついイライラしてしまうことが。

手塚さん:通勤や通学で急いでいるときは、そうなりますよね。わかります。

でも、踏切を感じることができるのは、心に余裕があることなんだなあと、自分自身のバロメーターにもなっています。それに、わたし的には踏切のあの「カンカンカン」という音は、すごく可愛いんです!「どっちから電車来るんだろう?」って、ワクワクします。

── 楽しそうに話される表情から、「踏切愛」が伝わります(笑)。

手塚さん:友だちからは、「手塚、また踏切見てテンション上がってる!理解できない」なんて言われています(笑)。

── 踏切でひとりテンションが上がっている手塚さんを想像すると、なんだかホッコリします。感性が瑞々しくていらっしゃるのだと感じます。

手塚さん:知らない踏切に出合う瞬間は幸せですね。以前、京都の嵯峨野で人力車に乗っていたとき、竹林を抜けたら、目の前に一直線の線路が広がっていたことがあって。「こんなところに線路が!」と、ひとりで大興奮。

あわてて俥夫の方に、「ちょっと止まってもらえますか?ここで写真撮ります!」と伝えたら、怪訝そうな顔で、「ここですか…?」と言われて。「ここはなんて名前の踏み切りですか!?」と食いつく私に、不思議そうな顔をされていました(笑)。

鉄道好きは、「鉄子」とか「鉄っちゃん」といった名前がありますが、踏切はなんて言うんでしょうね。

── なんでしょうね。踏子…?踏ちゃん…?でも、まさか「推し」が踏切だとは思いませんでした。

手塚さん:踏切と線路が広がる光景と、あの音が好きなんですよね。ですが、いまはどんどん踏切が減っていて、寂しいです。

昔から気ままな街歩きや散歩が好きだったので、そういう番組があったらいいのに…と言っていたんです。30〜40年以上前だったので、そんなことを言っても誰も見向きもしなかったけれど、いまは散歩番組が人気ですよね。

── 先見の明があったのですね。手塚さんが散歩をしながら、世界の踏切をめぐる番組があれば観てみたい気が(笑)。

手塚さん:マニアックすぎて、誰も観ないかも(笑)。でも、踏切や線路は懐かしさと温かさがあっていいですよね。電車が来るのをゆっくり待つのも楽しみのひとつです。

PROFILE 手塚理美さん

てづか・さとみ。1961年、東京都生まれ。俳優。7歳でモデルとして活動をスタート。1975年にユニチカ2代目マスコットガールとして芸能界に本格デビュー。1982年、NHK朝の連続テレビ小説『ハイカラさん』に主演。以降、『ふぞろいの林檎たち』『男女7人秋物語』など、様々なドラマや映画で活躍。2021年には、映画『メイド・イン・ヘヴン』で主演。

取材・文/西尾英子 画像提供/手塚理美(えりオフィス)