◇記者コラム「Free Talking」

 金属バットが低反発の新基準となって最初の大会だったセンバツ高校野球は健大高崎(群馬)の初優勝で幕を閉じた。低反発元年を象徴するかのように、「機動破壊」を掲げて走力で名を上げてきたチームが春の頂点に立った。

 健大高崎は全国屈指といえるスカウティング力を誇る。もともと能力の高い選手たちが機動力を身につけ、得点力の高いチームをつくる。かつてのような打撃の破壊力で圧倒することが難しくなった新時代のいわばトップランナーである。

 追いかけるチーム、特に私立のように有望選手を集めることができない公立校などは、どうやってトップとの差を縮めていけばいいのだろうか。大会中に聞いた徳島県立の阿南光を率いる高橋徳監督(41)の話が印象深かった。低反発への移行後、「打球が上がりすぎると失速する。弾道の低い打球を打っていこう」と指導してきたという。迎えた大会初戦。強打の豊川(愛知)に11―4で打ち勝った。

 芯の部分が小さいといわれる新基準バットに対応できるよう、いろいろな取り組みも行った。

 「重たい1100グラムのバット、1メートル1キロのバット、ホントに細いゴルフボールくらいの太さのバットを使ったり、さまざまなバットでとにかく数を打ってきました」

 バットが変わっても変えないこともあった。「言っていることは、たぶん何十年も変わってないですね。大会前から右打者やったらセカンドゴロを打っておけ、左打者やったらショートゴロを打っておけ、逆方向に打っておけという指導を続けていましたので」。センターから逆方向を常に意識させてきたという。プロでも好投手を攻略するときなどによく用いられる普遍的なアプローチだ。

 従来の基本を押さえた上で、いかに変化に対応して成果を上げるか。阿南光の取り組みは一つの好例。それぞれのチームが工夫を凝らして練習していた。時代の転換点だけに、夏はまた新たな躍進を見ることができそうだ。(大阪駐在・井原泰大)