将棋の第9期叡王戦5番勝負が7日、名古屋市東区の料亭「か茂免」で開幕し、藤井聡太叡王(21)=竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖との八冠=が挑戦者の伊藤匠七段(21)を107手で下し先勝した。持ち時間4時間のうち、消費時間が藤井叡王は3時間52分、伊藤七段は4時間を使い切って1手60秒未満の1分将棋になっていた。藤井叡王はタイトル戦対局15連勝となり、故大山康晴十五世名人のもつ最多連勝17にあと2と迫った。両者の公式戦対局成績は藤井叡王の11勝0敗1持将棋(引き分け)。

 昨年度の竜王戦、棋王戦に続く3度目の同学年対決。振り駒で先手となった藤井叡王の誘導で角換わりの戦型となり、昼食休憩明けに長考合戦から攻め合いに転じた。「こちらが2筋を攻めていく間に、急所の(自分の)玉頭に手を付けられて苦しい展開にしてしまった」と藤井叡王。日本将棋連盟の棋譜中継サイトでもAIが伊藤七段やや優利と判断する場面もあり「判断に少し課題が残った」と反省した。

 それでも2筋から6筋に回った飛車を中段で相手の金の前に差し出す103手目から一連の手順で「飛車をさばける形になって、少し抜け出したかなと」。この後、歩越しに自玉を直射していた相手の飛車を王手で奪える鮮やかな手順に持ち込み、それを読み切った伊藤七段が投了した。

 2024年度を白星発進した藤井叡王。全八冠を保持しているため本年度、全てのタイトル戦に防衛を懸けて出場する。3日後の10日には同じ愛知県出身の豊島将之九段(33)を挑戦者に迎え、第82期名人戦7番勝負(2日制)が始まる。叡王戦とのダブルタイトル戦に突入。「ここからは対局が続くので、体調に気をつけて頑張っていきたい」と抱負を語った。