◇羽ばたけ中部勢

 悔しさをバネに飛躍のシーズンにする。ソフトボール女子の最高峰「ニトリJDリーグ」が12日に開幕し、大垣ミナモ(岐阜県大垣市)の小西陽菜(19)の2年目の戦いが始まった。高卒新人だった昨季は、憧れのステージに立ちながらも5打席で無安打。チームも東地区の最下位に終わった。巻き返しを図るチームの起爆剤となるべく、今季は初安打と先発入りを狙う。

 ソフトボールを始めてから、ずっと試合に出るのが当たり前。常に主将を任されてきたエリートが、昨季初挑戦した国内トップレベルのリーグでもがいた。相手投手の球威に差し込まれ、外野に打球を飛ばせなかった。

 オフは体づくりをテーマに、夕食の回数を練習後の午後7時と9時の2回にした。土日は1食で1・5合の白米を完食する。入団時より体重が6キロ増え、打撃フォームを改造した効果も相まって「打球がすごく伸びるようになった」。増量で足の運びが鈍らないよう足首も重点的に強化し、生命線のフットワークにも磨きをかけた。

 競技との出合いは小学1年。地元のクラブチーム「ダイヤモンドキッズ」の監督と高校球児だった父・祐樹さんが知り合いという縁で参加した体験会がきっかけ。ボールを捕ったら、みんなが「すごいね」と喜んでくれた。そのうれしさがプレーする楽しさの原点となった。

 昨夏には女子U18アジアカップの日本代表に選出。北京五輪金メダリストで、代表のアシスタントコーチだった西山麗さん(40)との出会いが今も宝物だ。JDリーグで出番が得られず悩んでいた時期で、同じ遊撃手だった西山さんから「周りと比べず、今、自分に何が必要かをしっかり考えて。若いし、思い切ってやることが大事だよ」と助言をもらった。

 世界を知る大先輩の言葉に勇気づけられ、日の丸への思いがさらに強まった。「自分はまだ実力不足で、死に物狂いでやらないと(西山さんと)同じ舞台に立てない。でも、全ては自分次第」と、ソフトボールの採用が決まった4年後のロサンゼルス五輪を夢見る。

 頑張る理由は他にもある。高校3年間を過ごした石川県で今年元日に能登半島地震が発生。自宅が壊れ、仮設住宅での生活を余儀なくされた後輩や友人もいる。「好きなソフトボールができるのは幸せなこと。前向きに頑張ろうという気持ちをプレーで伝えたい」。懸命にバットを振り、ボールを追う姿で第二の故郷に元気を届ける。(唐沢裕亮)

 ▼小西陽菜(こにし・ひな) 2005年2月3日生まれ、富山県砺波市出身の19歳。164センチ。右投げ左打ち。ポジションは中学から遊撃手。庄川小1年から地元のクラブチーム「ダイヤモンドキッズ」でプレー。ソフトボール部に所属していた庄川中から石川・金沢高へ。3年時は全国高校総体(インターハイ)でベスト16。23年に大垣ミナモに入団。参考にするプロ野球選手は西武・源田壮亮と巨人・坂本勇人。昨夏には女子U18アジアカップ日本代表の一員として中国での本大会で優勝。