【リスボン=ルイス・バスコンセロス】技術面を支えたエイドリアン・ニューウェイ最高技術責任者(CTO、65)の離脱が発表されたばかりのレッドブルF1に、新たな首脳陣流出の可能性が高まった。チーム運営の実務を担ってきたジョナサン・ウィートリー・スポーティングディレクター(SD、57)だ。移籍先候補にはアルピーヌと、2026年からアウディワークスとなるザウバーが挙がる。強固なチームをつくり上げたキーマンまで離脱となれば、大きな痛手だ。

広がり続けるほころび

 レッドブルは今季も圧巻の戦いを続ける一方、チーム内のほころびが広がり続けている。今月1日に発表されたニューウェイCTOの来年早々の離脱に続き、今度はウィートリーSDの移籍が確実な情勢になったようだ。

 きっかけはやはり、クリスチャン・ホーナー代表が開幕前に引き起こした一連の騒動だ。ウィートリーSDはチームを守るために、女性従業員への不適切行為疑惑が発覚した当初からホーナー代表の辞任を要求。詭弁(きべん)を弄(ろう)して居座り続ける姿に嫌気がさし、自身の離脱を決意したとされる。

 1990年初めにベネトン(現アルピーヌ)のメカニックからスタート。長らくF1界を生き抜き、チームを束ねる力には定評がある。2006年に加入したレッドブルでは、レース中のタイヤ交換作業で最短記録をマークするまでチーム力を高めた立役者。国際自動車連盟(FIA)のレース関連首脳陣とのパイプも太く、チーム運営には欠かせない存在だ。

 その力量に目を付けたのが、アルピーヌとアウディだ。両チームとも、近い将来のチーム代表として招聘(しょうへい)を予定。トップチーム入りを目指す中堅チームにとっては、最良の人事となりそうだ。

 レッドブルは中堅エンジニアを含めて移籍を希望するスタッフが後を絶たず、ホーナー代表が対策に追われているという。ウィートリーSDの離脱がどのくらい早く実現するかは分からないものの、王者チームの土台が音を立てて崩れだしていることは間違いない。