「芸者や水商売の女性と遊ぶのを美学としていた」

 4月24日、吉本興業は公式サイトで、お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(60)から性的な行為を強要されたとする女性の証言を報じた週刊文春の記事を巡る対応を発表。同社によると、松本さんを含む100人以上のタレントらに聞き取りをしたという。決着までは数年かかるとみられている松本人志と文春の対決。性加害ではなく、不倫であるだけでも芸能生命を危機に陥らせかねないというのはこの数年の「常識」となっているが、かつてのスターたちとの一番の違いとは――。(以下、「週刊新潮」2024年1月25日号をもとに加筆・修正しました。日付や年齢、肩書などは当時のまま)

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 芸能人の女性スキャンダルが報じられると、糾弾されるよりは「女遊びは芸の肥やし」などと許容される時代がかつてあった。ジャニーズにおける一連の「性加害」が社会問題化した令和の世にあっては、牧歌的な言い分としか受け取らない人が大半だろう。

 そもそも「女遊び」という概念自体が時代錯誤も甚だしいと言われればそれまでなのだが、昔の“遊び”は前提が異なったという指摘もある。

「昔から『芸の肥やし』なんて遊び方が許されていた背景には、たとえファンであっても素人には手を出さない暗黙のルールがありましたね」

 と解説するのは、作家で演芸評論家の吉川潮氏。

「女遊びが好きでよくモテた藤山寛美や勝新太郎は、玄人さん、芸者や水商売の女性と遊ぶのを美学としていましたが、それは彼女たちが己の分をわきまえていて手切れ金さえ弾めば口外しないから。そうしたお金をケチって暴露された総理大臣もいたけど、昔の芸人はキレイに払っていたもんですよ」

上の世代の「キレイな遊び方」

 過去に不倫報道で一時表舞台から去った「アンジャッシュ」の渡部建(51)も、六本木ヒルズの多目的トイレで女性とコトに及んだあと、1万円だけ手渡した一件が話題を集めた。

 芸能リポーターの城下尊之氏が指摘するには、

「上の世代のキレイな遊び方を知らないまま人気者になるから、トラブルが起きるのでしょう。私も勝さんに銀座の高級クラブに連れて行ってもらいましたが、連れの客が女の子の嫌がる下品な話をしていたら、さりげなく別の話題に変えて助けたり、酒の弱い私に“無理せず自分のペースで飲んで”とささやいてくれたりして、ホステスさんたちからも好かれていました」

「“何百万か渡すんですか”と聞くと…」

 玄人遊びなら、かのビートたけし(77)は豪快だったと城下氏が振り返る。

「たけし軍団のさる方から聞きましたが、たけしさんは川崎のお店を貸切にして軍団のメンバーを全員引き連れて行く。店にとってもありがたいし、軍団も人目につかないから助かる。後輩の面倒見もよくて、豪快にお金をかけて遊んでいたそうです」

 そして4年前、70歳で亡くなったあの大物芸人は、こんな具合だった。

「何人もの女優などと関係がうわさされながら生涯独身だった志村けんさん本人から聞きましたが、彼には一定期間、交際する女性が一人常にいて、いくらでも制限なく使えるブラックのクレジットカードを1枚渡していたそうです。別れ際も文句を言われないようにまとまったお金を渡していたと。私が“何百万か渡すんですか”と聞いたら、“桁が一つ違うよ”と。要は1000万円単位だったそうで、これまで女遊びに使ったお金を合計すると青山にビルが建つと言っていましたね」(同)

 バラまく金額が莫大で、銀座の高級クラブといった玄人を相手にする往時の夜遊びは影を潜めた。

「互いに納得するようでなければ…」

 その時代背景を前出の吉川氏はこう読み解く。

「東映の梅宮辰夫とか山城新伍が大部屋女優やホステスを何人も斬ったとか、そういう話は今の時代じゃアウトだけど、それも玄人や仲間内の話でした。近ごろは玄人さんと呼ばれた水商売の女性などが、SNSで簡単に客の名前をバラして“下手だった”とか書く時代になったでしょう。芸能人も昔ほど玄人さんを信用できなくなったから、カネのかからない素人さんでいいじゃないか、となってしまったんでしょう」

 芸能人のみならず球界やサッカー界でも下半身問題がやり玉に挙がるケースは多々あるだけに、こうした遊び方をしていたVIPたちは戦々恐々の態ではないか。

 城下氏に言わせれば、

「ひと昔前から芸能人といえば、酒を飲み、ばくちを打って、女を買うといったことをしてはいましたが、時代や方法は変われど女の子と遊ぶなら、しっかりとお金を渡して連絡も取り合って、その関係について互いに納得するようでなければ、相手も人間ですから怒りの感情を持たれてしまうと思いますね」

 3月28日、松本人志が「週刊文春」の報道で名誉毀損されたとして文藝春秋と編集長に5億5000万円の損害賠償などを求めた民事訴訟の第1回口頭弁論が東京地裁で行われた。ネット上では今も「松本断罪派」と「松本擁護派」の論争が続くが、果たして司法の判断は――。

デイリー新潮編集部