1月に巨人がルーグネッド・オドーアの獲得を発表した時、スポーツ報知は紙面で「オドろき」と報じた。ところが、ご存知の通り3月26日に突然の退団が報じられた。今度は巨人ファンだけでなく、プロ野球ファンの全員が「オドろく」番となった。とはいえ、オドーアのオープン戦打率は1割7分6厘。離日を惜しむ声は少なかった。

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 改めてオドーアのオープン戦を振り返っておこう。12試合に出場し、34打数で6安打、1四球、9三振。特に巨人ファンが落胆したのはホームラン数かもしれない。

 オドーアは強打者という触れ込みだった。MLBでは通算178本のホームランを放ち、3シーズンで30本以上を記録している。ところが、オープン戦では何と0本。日本人ピッチャーが得意とする変化球に翻弄されていたのだ。

 オドーア入団の報を受け、デイリー新潮は1月28日、「メジャー178本塁打の巨人・新外国人『オドーア』に、専門家は『日本野球と最も合わない選手』 “フリースインガー”を含む4つの不安要素」との記事を配信した。

 この記事でMLB研究家の友成那智氏はデイリー新潮の取材に対し、「巨人ファンにとっては残念な話ですが、日本野球とは最も合わないタイプの選手だと思います」と“予言”していた。

「どんなボールでも手を出すバッターのことを“フリースインガー(free-swinger)”と呼びます。オドーア選手が、まさにそうです。低目を得意にしており、普通のバッターなら難しい球でもホームランを放つところは魅力的です。しかし、どんな球でも振ってしまうので、四球が少なく三振が多い。結果として出塁率は低くなります。日本の投手は制球力があり、緩急を交えるのも得意ですから、翻弄されてしまうかもしれません」

 おまけに守備も上手ではないし、性格も短気で難がある──友成氏の指摘を読み返せば、オドーアの不振も当然だったという気がする。ただ、それにしてもオドーアの退団理由には驚かされた。

 オープン戦の最終戦となった24日の対楽天戦を終えてから、阿部慎之助監督がオドーアに2軍での調整を提案。するとオドーアは「受け入れられない」と拒否し、契約解除を申し出たというのだ。

 吉村禎章・編成本部長が取材に応じ、「何度も話し合ったがオドーアの気持ちは変わらず、退団を申し入れてきた」と経緯を説明した。この際、吉村本部長は「契約の中で、全て1軍で試合に出すという確約はしていない」と強調したが、そもそも、そんな確約を与えることなどあるのだろうか?

 友成氏は「MLBの場合、1軍起用を確約するという契約は、決して珍しい条項ではありません」と言う。

MLB復帰の可能性

「日本の場合、ベテランや中堅の選手でも不振に陥ると2軍行きを受け入れ、若手と共に調整に専念するのはよく見られる光景です。ところがMLBは異なります。1軍と2軍を行ったり来たりする若手は例外ですが、オドーアのように立派な成績を残している選手がマイナーリーグ落とされると、“1軍失格”のような強いマイナスイメージを持たれてしまうのです。そこで不名誉な“マイナー行き”が経歴に残ってしまうことを防ぐため、MLBでは相当数の選手が『2軍に落とさないこと』を契約で明記しているのです」

 MLB時代の契約が日本球団との交渉でもそのまま使われ、「2軍に落とさないこと」の条項が残るケースもあるという。

 一方、巨人の吉村本部長は「1軍確約」の契約条項が存在しないどころか、「監督の言葉に異議を唱えることはできないと、契約上やってます」との事実も明らかにした。監督に逆らい、2軍落ちを拒否したオドーアこそ、契約を破ったという主張だ。

「2軍落ちに対するMLBの“常識”も含め、オドーアのプライドは2軍行きを容認できなかったのでしょう。彼は2017年、レンジャーズと6年総額4950万ドル(約74億円)の契約を結びました。ちょっとやそっとの散財で消えるような額ではありません。要するにハングリー精神は皆無で、巨人にしがみつく必要はないのです。アメリカに戻れば、1軍選手として契約してくれる球団も見つかるでしょう。春先に故障者が出るチームがあるからです。スタメンは無理でも、交代要員や代打の切り札として期待されるのではないでしょうか」(同・友成氏)

獲得した巨人の責任

 オドーアが巨人ファンから厳しく批判されるのは当然だとはいえ、友成氏は「巨人の海外担当スカウトも猛省したほうがいいです」と指摘する。

「なぜ、あんなフリー・スインガーを獲得したのか。制球力の高い日本人ピッチャーに抑えられてしまうことは、最初から分かっていました。とにかく最近の巨人は、長打力のある外国人野手にこだわりすぎです。MLBではそれなりのホームラン数が記録されていても、日本人投手は苦手というタイプが目立ちます。ここは思い切って、スカウトの方針を大転換してはどうでしょうか。実績皆無の若手を発掘し、数年かけて育成に挑戦するとか、長打力はなくとも出塁率の非常に高い選手を選ぶとか、それくらいの大改革に着手しないと、巨人が外国人野手の獲得で成功を収めることはない気がします」

デイリー新潮編集部