サイバーエージェント <4751> のメディア事業がついに四半期ベースで黒字化し、話題となっている。メディア事業の主力サービス「ABEMA」はワールドカップ放映を目玉に、サッカーファンの獲得を中心に成長。足元では大谷効果でMLB中継が大きく寄与している。同社の株価は2021年にウマ娘の爆発的ヒットで株価が高騰し、その反動で今は低迷している。メディア事業の黒字化が株価復活の材料となるか。

■4月24日発表した決算「売上高が過去最高」

メディア事業の黒字化で大きく注目されたのは、ABEMAだ。株式会社AbemaTVによるインターネットテレビ局で、2016年に始まって以来8年目。累積で1278億円の赤字を出してきたが、同事業の黒字化は創業者、藤田晋氏の悲願とされる。ゲーム、広告部門につぐ収益の柱として、サイバーエージェントの転機となることが期待されている。

4月24日に発表した決算(2024年9月期 第2四半期)は、過去最高の売上高2151億円(前年同期比10%増)、営業利益210億円(12%増)と好決算だった。メディア事業の売上高は420億円(26%増)、営業利益が1億円ではあるが、初めて黒字化した。

2021年9月期には、スマホゲーム・ウマ娘の爆発的ヒットで過去最高の収益をたたきだしており、その反動で翌2022年9月期、さらにその翌期2023年9月期と、2年連続で大幅減益となっていたが、メディア事業の採算改善で増収増益トレンドを取り戻した。

■ワールドカップでサッカーファンに定着

ABEMAが大きく伸びた背景は、サッカーとMLBのスポーツ需要を取り込んだことだ。

2022年のサッカーワールドカップで勝負をかけた。200億円を投じて、日本戦以外も含む全試合の放映権を獲得した。全試合を無料で生中継したのは日本のメディアとしては初の試みだった。ワールドカップ期間中にABEMA史上最高の週間アクティブ・ユーザー数(WAU)となる3409万ユーザーを記録、ワールドカップ後もWAUが平均1.4倍となる躍進をみせた。

MLBの貢献も大きい。大谷選手のドジャースデビューとなった韓国での開幕戦の2024年3月のWAUは2308万人とワールドカップ期間を除く過去最高となった。直近4月のWAUは2364万ユーザーとさらに伸びている。5月も大谷の活躍からして期待ができそうだ。

■マッチングアプリと公営ギャンブルが黒字化を主導

ただし、ABEMA単体での黒字化はもう少し時間がかかりそうだ。採算は急激に改善しているがサブスクだけで収益を伸ばすのは簡単ではない。“ABEMA広告”や ABEMA以外の“周辺事業”の伸びが大きい。

ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏もABEMAについて自身のYouTubeチャンネルで取り上げ、「メディア事業の黒字化がネット業界で話題」「メディア事業黒字化で一段落した」としながらも、黒字を主導したのはマッチングアプリの「タップル」、競艇・競輪の投票サービスの「ウィンチケット」などと分析している。

■株価は「ウマ娘」の反動安を見直す時期か?

サイバーエージェントの株価は5月7日時点で981.1円。ウマ娘の爆発的ヒットで2021年6月につけた2441円の過去最高値からは6割ほど下げている。ABEMA黒字化もある程度は織り込まれていたのか、決算発表後の反応は限定的だった。

「『ABEMA』をいつでもどこでも繋がる社会インフラにマネタイズ強化により、まずは収益化を目指す」と戦略を掲げており、ステージが変わりつつあることを示している。

Amebaブログを粘り強く継続して、黒字転換したように、ABEMAもさらに伸ばせるかどうかに注目が集まっている。

文/編集・dメニューマネー編集部
画像・ABEMA プレスリリースより