2度目のマスターズ制覇に期待がかかる松山英樹

 PGAツアーでプレーする松山英樹が好調をキープしている。

 2024年は1月末のファーマーズインシュランスオープンで13位タイになると、2月18日までカリフォルニア州のリビエラCCで開催されていたザ・ジェネシス招待で、6打差を逆転しツアー通算9勝目を記録。2年ぶりに世界最高峰の舞台で勝利し、復活を印象付けた。

 最終日は9アンダー62という圧巻のゴルフを展開。出だしの1番から3連続バーディを奪うと、ハーフターンした10番からも3連続バーディとし、終盤15番からも3連続バーディを奪取した。

 12番で15mのロングパットを決めるなどパッティングも良かったが、それ以上に光っていたのがショットだ。15番で189ヤードのセカンドショットをベタピンに寄せると、16番パー3ではもう少しでホールインワンというスーパーショットも飛び出しバーディ。ストロークス・ゲインドのトータルは13.284でトップとなるなど、ティーショットからグリーン上でのプレーまでがハイレベルだったことが勝因となった。

 3月に入っても松山の好調ぶりは変わらず、アーノルド・パーマー招待を12位タイで終えると、“第5のメジャー”といわれるザ・プレーヤーズ選手権では4日間とも60台で回り6位タイ。ショットに対しては「これをやり続ければ上位に行けるのかな、というのは何となく見つかった」と分析するなど、今後への期待を持たせるコメントも残してくれた。

 昨季は、2014年から続けてきたシーズン最終戦のツアー選手権出場が9年連続でストップした。シーズンのトップ10入りがわずか2回というのは、2013-14シーズンの本格参戦以降ではワーストで、フェデックスカップランキング50位もPGAツアーに本格参戦してからのキャリアでは最低。シーズン最後が途中棄権で終わるという、不本意なシーズンとなった。

 しかし今年は、ファーマーズインシュランスオープンでアイアンの調子が上向いている様子をうかがわせると、優勝したザ・ジェネシス招待以降も崩れることなく上位争いを展開。こうなると、4月に開催される海外メジャー、マスターズでの2021年に続く2度目の優勝も見えてきそうだ。

 ショットが復調していることはスタッツを見ても明らかだ。グリーンを狙うショットのスコア貢献度を示すストロークゲインド・アプローチ・トゥ・グリーンを見ると、ファーマーズインシュランスオープンで11位になると、アーノルド・パーマー招待で13位。そしてザ・プレーヤーズ選手権では6位となった。

 今年のストロークゲインド・アプローチ・トゥ・グリーンは38位と平凡だが、これは、ファーマーズを除いた今年初頭の同ランクが50位前後だったことが影響している。直近3大会はこのスタッツが示す通り、グリーンを狙うショットがスコアメイクに結びついており、上位につける要因の一つとなっているようだ。

 そして、グリーンの端から30ヤード以内のショットのスコア貢献度(グリーン上のプレーは含まない)を示すストロークゲインド・アラウンド・ザ・グリーンを見ると、松山のそれはアプローチ・トゥ・グリーンの上を行く。出場8試合中2大会(ファーマーズインシュランスオープンとWMフェニックスオープン)でトップの数字。この他、優勝したザ・ジェネシス招待など3大会ではトップ10に入っている。こうした数字が奏功し、今年のストロークゲインド・アラウンド・ザ・グリーンはトップの成績を残しているのだ。

 さらに、ショット全体のスコアに対する貢献度を表すストロークゲインド・ティー・トゥ・グリーンは3位。ストロークゲインド・パッティングが134位とグリーン上では今一つとなっているだけに、松山がショットを武器に上位争いをしていることが分かる。

 では上記のデータを見た上で、松山はマスターズでメジャー2勝目を挙げることができるのだろうか?

 マスターズの舞台となるオーガスタ・ナショナルGCは、「ガラス」とも表現されるグリーンの速さと難易度の高さが有名だ。パターがボールに触れるだけで、場所によってはグリーンオーバーしてしまうほどのスピードがある。みなさんも、グリーン上で苦悶するトッププレーヤーを何度も見てきたことだろう。マスターズで勝つにはパットのスキルが高くなければならないと言われるが、それにはこうした要素があるからだ。

 そこで、2021年のマスターズにおいて松山はどのようなプレーをしていたのだろうか。カギとなったのは3日目。雷雲接近のため中断を挟むなどアクシデントがあったが、1イーグル、5バーディの7アンダー65をマークし単独首位に立った。

 15番では208ヤードを5番アイアンで2オンさせイーグル奪取すると、16番パー3では1.2mにつけ、17番でも3mに寄せて2連続バーディ。勝利を手繰り寄せるラウンドとなった。好調なショットを確実に沈めるパッティングも素晴らしかったが、やはりショットメーカーらしく、確実にバーディチャンスにつけたことがビッグスコアをもたらす要因となった。

 そして公式データではないが、グリップエンドにセンサーを装着しスイングデータを収集できるデバイスを提供する「Arccos Golf」によると、3日目中断後における松山のパッティングのストロークゲインドは全体26位。精密なショットにパッティングがかみ合っていたようだ。

 今季の成績やスタッツが示すとおり、松山の生命線はショットだが、やはりメジャーを獲るにはグリーン上のプレーが大きく影響するということ。勝利したザ・ジェネシス招待のストロークゲインド・パッティングも3位と、やはりパッティングが勝負を分ける要因となった。松山が2度目の快挙を達成するには、「ガラス」のグリーン攻略がカギとなるだろう。