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 新NISA(少額投資非課税制度)では「高配当株」が人気だ。安定的に配当がもらえれば、株価次第で変動する値上がり益よりも、より確実な利益が期待できる。長く保有するのにも向いている。配当に着目するのであれば、米国株のほうが有利とする見方がある。米国企業はもともと株主への還元を重視してきたからだ。

 新NISAでは海外の株式に投資する商品の人気が高い。ネット証券のランキングを見ても、S&P500種株価指数やナスダック総合指数など米国の株価指数に連動する投資信託や上場投資信託(ETF)が目立つ。

 足元では米連邦準備理事会(FRB)の利下げ姿勢をにらんで一進一退が続いているが、3月にはダウ工業株30種平均をはじめとする主要な株価指数が史上最高値を繰り返し更新した。

■世界最大の消費国

 米国をはじめとする海外株にも詳しいグローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博さんは言う。

「米国は世界の覇権国であること、また世界最大の消費国であり、米国でトップを取れば世界のトップにつながるなど、米国株が根本的に強い理由は複数ありますが、現在の株価が強い理由は過剰流動性にあると思います。今は量的引き締め(QT)が進んでいますが、いまだにマネタリーベースはコロナ前の約1.7倍の水準を維持しています。これが株や不動産、仮想通貨などリスク資産の価格上昇の一番大きな原因だと思います」

 こうした状況は長い目でみて続く可能性が高いという。

 日本株も日経平均株価が初の4万円をつけるなど高値の水準にある。ただバブル絶頂期につけた史上最高値を更新するまで30年以上かかった。日本経済が本格的な成長軌道に乗るかどうかは予断を許さない。 

 戸松さんは言う。

「米国は国内総生産(GDP)を見ても日本に比べ堅調に成長しています。その米国に属する企業は、日本の企業よりも安定的に成長できる可能性があると思います。また、近年は日本でも企業統治改革が進んできて世界的な資金流入がさらに進む可能性も十分ありますが、米国企業のほうが、利益を出したらきちんと投資家に増配や自社株買いなどを通じて還元する文化なり、枠組みなりが以前からしっかりしています」

 新NISAがスタートし、日本でも企業はより個人投資家を意識するようになった。東京証券取引所も上場企業に対し、株価や資本効率を意識した経営をより強く求めている。配当をはじめ株主への還元姿勢を強めるようになった。

■ずっと高くなる

 しかし、戸松さんによれば米国企業はもともとそうした姿勢や意識が強いという。新NISAでは個別銘柄への投資にあたって高配当株が人気だが、米国の個別株にももっと目を向けたほうがいいのかもしれない。

 そこで戸松さんが注目する米国の高配当株を挙げてもらった(上の表)。ただし、戸松さんは次のように話す。

「私が捉える高配当株の魅力は、見た目の(表面的な)配当利回りが高いということではありません。増配が続いている企業が、今後も増配していくことを加味して考えます。すると10年や20年といった長い目でみれば、その利回りは現在の見た目の利回りよりもずっと高くなる。さらにその後も、同じような期待が持てるということです」

 配当は、その時々の企業の業績や還元姿勢に左右される。戸松さんは、長く株式を保有することを視野に入れ、直近の配当利回りばかりでなく、増配の継続性を重視するという。増配が続けば、結果として長く保有した場合の利回りは有利になるという考え方だ。

「NISAは長期投資が軸になります。長く投資できる銘柄に投資するべきでしょう」(同)

 今回挙げてもらった銘柄をみると、消費者の暮らしや企業の事業活動に欠かせない分野で高いシェアや、ライバルに差をつける技術やノウハウを持つ企業が目立つ。にもかかわらず、日本ではまだ一般にあまり知られていない企業が多い印象だ。

■水は欠かせない

 このうち、エコラボは、洗浄剤や洗浄機器、水処理システムといった水処理・衛生サービスを幅広く手がける老舗企業だ。170カ国以上に展開し、顧客には食品・飲料会社やIT大手、電力、化学、製紙メーカーなど主要企業も名を連ねる。

 企業が事業活動を進める上で水は欠かせない。同社はその利用や管理、処理するための製品やシステムを持つ。消耗品の交換など既存客からのメンテナンス需要も多く、収益の柱になっている。強固な顧客基盤や収益基盤を支えに、着実・安定的な成長が見込まれるとしている。

 アンフェノールは、世界最大級のコネクターメーカー。各種コネクターやケーブル、アンテナ、センサーの設計・製造を手がける。「コネクターはあらゆる電子機器で使われます。技術革新に伴って、新しい需要が生まれることになるので将来的な成長の機会も持ち合わせています」(戸松さん)。

 展開先は自動車から通信、医療まで幅広い。特に得意なのが、鉄道や建機、ファクトリーオートメーション(FA)、航空宇宙・防衛向けだ。1932年の創業当初から、米軍との取引などを通じて鍛えられたようだ。軍の規格では耐衝撃性や耐振動、耐熱性など厳しい性能が求められる。

 ノードソンは、接着剤やコーティング剤を塗布・処理する装置のグローバルメーカーだ。同社の精密塗布装置はグローバルスタンダードとして世界中の多くの企業に導入されているという。塗布やコーティングの技術も、前述の水処理やコネクターといった技術と同じように、様々な分野で求められる。2023年8月には農薬散布用の精密制御技術を持つイタリアの企業を買収するなど、製品のラインナップや展開先を拡大している。

■10%の税金

 米国株への投資にあたっては、配当や分配金について現地で10%の税金がかかる点に注意しよう。値上がりで得られた利益は非課税だが、新NISAを使っても現地で取られる配当や分配金への課税は避けられない。

 また、証券会社によって扱っている銘柄や売買手数料、為替手数料が異なることも知っておきたい。米国株でもネット証券など売買手数料や為替手数料を無料化するところもあるが、一時的なキャンペーンで安くなっている場合もある。保有する銘柄や取引の頻度が多くなると費用もかさむので、証券会社のホームページなどでよくチェックするようにしよう。

 さらに日本株に比べて銘柄や市場全体の情報量が少ないため、普段の情報収集が重要になる。強い国でライバルとしのぎを削る企業の高い成長力を取り込むためにも、しっかりとした準備をしておこう。

(AERA dot.編集部・池田正史)

※株式投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。