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 投資で得られる利益に税金がかからない新しいNISA(少額投資非課税制度)では、優待サービスも楽しみの一つ。最近はサービスをなくす動きもある一方で、個人投資家にターゲットを当てて優待の内容を強化したり、サービスを受けやすくしたりした銘柄もある。株式の専門家に、4月に権利が確定する優待株のうち、注目の銘柄を挙げてもらった。

 東京株式市場は日経平均株価が4月1日に終値で節目の4万円台を割れると、その後は3万9千円台前後で一進一退の推移が続いている。

 年度初めは機関投資家がそれまでにあげた利益を確定し、売りの姿勢を強めることが多いと言われる。4月半ば以降に本格化する3月決算企業の業績や見通しを見極めるため取引を控える動きも指摘されている。

 相場が軟調だと不安になるかもしれない。だが今は狙っていた銘柄の株価も調整し、普段より買いやすくなっている可能性もある。株価が値下がりしていれば、取引のチャンスだ。

■新NISAで長く保有

 新NISAで長く保有することを考えている場合、値上がり益や配当だけでなく、優待を期待する投資家も少なくないだろう。国内は3月決算企業が多く、期末の3月や中間期の9月に権利が確定する企業が圧倒的に多い。権利確定月ごとの銘柄数をみると、3月は800社近くで群を抜く。

 しかし少数とはいえ、4月に権利が確定するところも30社程度ある。このうち、マーケットアナリストの藤本誠之さんが注目する銘柄が次のページの表だ。藤本さんは多くの企業や経営者への直接訪問を通じて成長企業を見極めることに定評がある。

 藤本さんが挙げた銘柄の一つが、回転ずしチェーンを展開する「くら寿司」だ。藤本さんは言う。

「優待は『くら寿司』など同社が運営する国内の店舗で使える割引券がもらえます。100株以上の保有で2500円相当、200株以上で5千円相当、400株以上なら1万円相当といった具合に、保有株数が増えるほど多くなる。優待の額を株価で割った『優待利回り』はそれほど高いとは言えませんが、使える店は全国にあるので利用しやすい」

 同社株は4月12日に株価が年初来高値をつけるなど値上がりが続いている。優待サービスも投資家の人気の支えとなっているようだ。

 ネットを通じて理美容室向けにシャンプー台などの業務用機器やシャンプーやトリートメントといった美容品や化粧品を販売するビューティガレージは、100株以上保有すると、4千円相当の人気の取扱商品の中から希望の商品が選べる。

「今後はフィットネス向けなど、理美容室以外にも展開先を広げる方針です。株価は足元では弱含んでいますが、割安とみていいかもしれません」(藤本さん)

■広告看板の需要が増加

 一方、ビーアンドピーは、100株以上保有すると1千円相当、500株以上で2千円相当のクオカードがもらえる。1年以上続けて保有するのが条件だが、24年は1年未満でも優待が受けられる。さらに3年以上保有すると、もらえるクオカードは1千円分増える。

「同社は業務用の大型インクジェットを使ってイベントの際などに必要な垂れ幕やサインディスプレーを作る事業が柱の一つ。大阪や東京、横浜、名古屋といった都心部に拠点を置き、少ない量でも仕事を引き受け、すぐに仕上げる点が強みです。経済再開でイベントなど垂れ幕や広告看板の需要が増えているのが追い風になっています」(同)

回転ずしチェーンを展開する「くら寿司」。使える店は全国にあるので利用しやすい

 株主優待を受けるためには「権利確定日」から2営業日前までに株式を買う必要がある。4月末が権利確定日の企業の場合、月末の最終営業日の2営業日前、つまり今年は4月25日に株式を購入していると優待の権利が得られる(「権利付き最終日」)。

 今回紹介した銘柄はいずれも4月30日が権利確定日だが、銘柄によっては、月末ではなく「15日」や「20日」が権利確定日の企業もある。取引の前にしっかり確認しておこう。

■「高値づかみ」リスク

 また、人気の優待株や高配当株は権利付き最終日に向けて取引が活発化し、株価も値上がりする傾向がある。前述したように、4月に権利確定日がある企業は少ない。

 そのため藤本さんは「権利確定日が多い3月などよりも、限られた銘柄に人気が集中する恐れもある」と指摘する。

「株価の値上がりによって『高値づかみ』となるリスクを避けるためにも、できるだけ早めに取引しておくことをお勧めします。早めに買った後に、もし権利付き最終日に向けて株価が上昇したら、手放してしまうのも選択肢の一つです。優待や配当の権利は獲得できませんが、値上がり益は得られます。株価や優待・配当の水準や、その企業への思い入れなども考え合わせて、柔軟に構えておくとよいでしょう」

※株式投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。

(AERA dot.編集部・池田正史)