JLPGAツアーの第6戦「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」はプロ4年目で23歳の阿部未悠(あべ・みゆう)が念願の初優勝を遂げた。2位に終盤接戦を繰り広げた佐久間朱莉(さくま・しゅり)が入った。

「今週勝てると思って臨んでいたのですごい悔しい」

◆国内女子プロゴルフ<富士フイルム・スタジオアリス女子オープン 4月5〜7日 石坂ゴルフ倶楽部(埼玉県) 6535ヤード・パー72>

 21歳の佐久間朱莉が勝者の阿部未悠を祝福した。「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」最終日、佐久間は阿部に1打差で振り切られ、悲願の初優勝にはまたも届かず。「本当は今週勝てると思って臨んでいたのですごい悔しいです」と、こらえきれず涙が一筋、頬を伝った。

ホールアウト後、涙を流した佐久間朱莉 写真:GettyImages
ホールアウト後、涙を流した佐久間朱莉 写真:GettyImages

 最終日、中学時代から開催コースで何度も練習を重ねた地元・埼玉出身の佐久間が試合を引っ張った。初日、2日目の寒さとは打って変わって気温20度を超える好コンディション。風もほとんどない中でスコアの伸ばし合いが展開された。

 通算8アンダーの首位スタートは佐久間、阿部、上田桃子。出だしの1番パー5でイーグルを奪取した佐久間に阿部がバーディーでついていく。さらに1組前のイ・ミニョン、蛭田みな美らも追いすがる。

 地元の応援を背にプレーした佐久間だったが、ラウンド中盤「重圧から手が動かなくて…」と苦しんだ。それでも13番で7メートル、14番で4メートルの連続バーディーを決めるなどノーボギーのゴルフを展開したが、終盤は阿部の勢いが勝った。

18番でバーディーパットを外した佐久間朱莉 写真:GettyImages
18番でバーディーパットを外した佐久間朱莉 写真:GettyImages

 17番パー5でバーディーを奪った阿部に逆転され、1打ビハインドで臨んだ18番。「絶対(バーディー)取るって意気込んでいきました。ティーショットがあまり得意じゃないホールなんですけど、1打目も2打目も完璧。緊張の中であのショットが打てたことは、少しは成長したんじゃないかなと思います」と、奥のカラーながらバーディーチャンスにつけたクライマックスのプレーに胸を張った。

 一方の阿部はグリーンオーバー。バーディーならまだチャンスはある。しかし、「打ててたけど、思ったより切れました」と、バーディートライはカップをすり抜け、勝利を逃した。

「パーパットを打つ前から(泣きそうで)ヤバかったけど、最後は笑顔で未悠ちゃんを讃えたかった」と、必死で感情を飲み込んだ。

 1日を振り返り、「自分の中ですごいいいゴルフができた18ホールでした。それでも勝てなかったのはまだまだ自分の力不足だなと思いました」と唇をかむ。それでも「これまで以上に悔しい」のは、きっとそれだけ力がついている証拠だろう。

 師匠のジャンボ尾崎(将司)その弟2人(健夫、直道)のアドバイスで、勝ちにこだわって挑んだ一戦は惜敗に終わったが、その経験こそが飛躍への糧になる。ラウンド中に佐久間の背中を押した「これからだよ。頑張って」という多くの地元ファンの声援は、今後も佐久間のもとへ届くはずだ。

佐久間朱莉(さくま・しゅり)

2002年12月11日生まれ、埼玉県出身。アマチュア時代はナショナルチームで活躍。コロナ禍で延期となっていた2020年度のプロテストにトップ合格。22年シーズンはメルセデス・ランキング33位、昨季は25位に入り2年連続でシードを獲得した。大東建託所属。

小川淳子(ゴルフジャーナリスト)