「ダンパーがどんな基準を持ってしても世界一 この味、おじさん憧れのロータス・ヨーロッパのイメージそのもの」by 国沢光宏 これがアルピーヌA110Rチュリニに乗った自動車評論家の本音!
「ダンパーがどんな基準を持ってしても世界一 この味、おじさん憧れのロータス・ヨーロッパのイメージそのもの」by 国沢光宏 これがアルピーヌA110Rチュリニに乗った自動車評論家の本音!
「最高ですね!」国沢光宏
昨年乗ったスポーツカーの中で最も印象に残ったのがA110Rだった。A110の車体を固め、カーボンパーツを多用し軽量化。ザックスの素晴らしいダンパーで味付けしたクルマなのだけれど、走り出した直後から「最高ですね!」の連続!
ボディが軽いだけでなく、ミドシップだから前後の重量配分も良好。ハンドル切るとイナーシャを感じることなくノーズはインに向く。
さらにダンパーがどんな基準を持ってしても世界一! しっかり減衰力を出しながら、微少な入力で動く。競技車両に使われているダンパーのような精度を持っているのだろう。この味、悔しいかな文字だと表現できないです。もちろん普通のA110とも全く違う。私らスーパーカー世代にとって憧れの存在であるロータス・ヨーロッパのイメージそのもの。
カーボンニュートラルに向け、2030年代中盤になると世界的な規模で純エンジン車が消えていく。それまでスポーツカーメーカーはこういった特別仕様車を少量ずつ(A110Rチュリニは日本で24台)出してくると思う。最後の純エンジン車を考えているならまだチャンスある。
「いかにもA110的なフットワーク」渡辺敏史
今のご時世、1t前後の重量でスポーツカーを作ることはとても難しいのはお察しの通り。ケータハム・セブンのような吹っ切れた企画でもなければ、そこに棲むのはロータス・エリーゼ系とマツダ・ロードスター系くらいだろうと思われていたところに、ポーンと入ってきたのがアルピーヌA110だ。
それから約7年。世情も変わりパワートレインの変革なども迫られる中で、好き者の琴線をくすぐる特別仕様車なども追加しながら、A110はマニアックな進化を遂げてきた。チュリニはA110Rの要素をそのままに、ホイールに軽量アルミを採用している。同時に価格もちょっと安くなってくれればよかったが、高価なカーボン・ホイールの扱いに神経をすり減らすなら、敢えてアルミで山坂道をガンガン走りたいというニーズに応えたといえるかもしれない。
そしてアルミがゆえの減衰特性は、様々な凹凸が続く公道での乗り味にも巧く働いていた。軽いのに粘りがあってしなやか……的ないかにもA110なフットワークの延長にチュリニはあるようも思う。
「“首ったけ”になるには絶好なマシン」西川淳
本誌執筆陣お墨付きスポーツカーといえば最近じゃこのA110がその筆頭だろう。私は多少へそ曲がりな性格で、ほとんどパーフェクトというべきこの仏産2シーター・ミドシップに対してほとんどパーフェクトであることが面白くない要因だと思っていた。
ところがRチュリニはどうだ。ヤンチャな要素(室内外の見栄えや聞こえてくるノイズ、締め上げられたアシなど)もそこかしこにあって、パワートレインに変更がないにもかかわらず、乗っていてスタンダード仕様よりはっきり速く感じる(実際に速い)。“首ったけ”になるには絶好なマシンだ。
もちろん性能のパーフェクトさにいささかの欠如もないわけだから、ドライビング・ファンを味わわせるためのサービス精神が旺盛になったぶん、良い意味で“いびつ”なスポーツカーになったというべきなのだろう。Rのようなカーボン・ホイールを履いていないから精神的な安心感もあって、気兼ねなく走り、攻め込んでいける。いやはや、A110恐るべし。とはいえ乗るならGTを選ぶだろうな〜と思いつつ、中古車サイトを見れば、あったぞピンクメタ!
写真=小林俊樹(メイン)/神村 聖(サブ)
(ENGINE2024年4月号)