西川淳がロールス・ロイス・ゴーストに乗って思わず叫んだ本音がこれ!「間違いなく乗用車界の史上最高峰」
「こんな巨体がまるで不自由なくターンパイクを駆け上る」西川淳
上には上があるということがゴーストに乗ればよく分かる。
それまでどんなに乗り心地の良いクルマに乗ってきたとしても、ゴーストに乗ると“負けた”と知るだろう。もちろん過去には単なる心地良さで勝るモデルもあったはず。けれどもショーファーではなく完全なるドライバーカーとしてゴーストに勝るとも劣らないモデルが果たして他にあったかというと、同門のカリナンくらいしか見当たらない。
間違いなく乗用車界の史上最高峰。値段が高いからそんなの当たり前、を超えてくる。
こんな巨体がまるで不自由なくターンパイクを駆け上る、駆け下りる。V12エンジンは遠くの方で滑らかな音を奏で、その精緻な唸りは耳まで心地よい。そんなクルマ、他にある?
ゴーストに限らず最新RRの味わいをチョイ乗りなんかで知ってしまうと、こればかりはクルマ好きは知っておくべきレベルを超えて本当に不幸だ。なぜならそれがもう頂点だから。
RRは今、若い人に人気なのだそう。若返りに成功したブランドなのだ。彼らは一生RRから離れられないことだろう。とっても羨ましい。
「唯一無二の世界に浸る」島下泰久
最初は思わず二度見してしまったが、よく見ると派手な中にどこか漂うノーブルなカラー・コーディネートに、すぐに魅入られてしまった。こういうパーブルの着こなしは、やはり英国車ならではだ。
走り出すと、そこにはまさにロールス・ロイスの世界。静謐、滑らか、けれどどこからでも力が湧いてきて、まさにゴーストよろしくスーッという音が聞こえるかのように移動していく。あらゆる入力を柔らかくいなす丸い乗り心地も、絶品と言うほかない。
さすがなのは、それなら自動運転にすればなどとは思わせないことだ。つまり、ドライバーズ・カーとしての快感もちゃんと備わっている。スピリット・オブ・エクスタシーを遠くに見やりながら、鷹揚なそのクルマの動きを味わっていると、高い位置から見下ろすようなドライビングポジションも相まって、それこそクルーザーでも操っているかのよう。心が開放される。
これもまた、間違いなく走りの歓びのひとつのかたちである。唯一無二の世界にひととき、存分に浸ることができたのだ。
写真=神村 聖(メイン)/小林俊樹(サブ)
(ENGINE2024年4月号)