NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』。その主人公のモデルである昭和の大スター・笠置シヅ子について、「歌が大好きな風呂屋の少女は、やがて<ブギの女王>として一世を風靡していく」と語るのは、娯楽映画研究家でオトナの歌謡曲プロデューサーの佐藤利明さん。佐藤さんいわく「人気絶頂の笠置が出演して唄うだけで、映画館に観客が殺到するようになった」そうで――。

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『結婚三銃士』

多忙な日々が続くなか、笠置への映画出演のオファーが続いた。笠置が出演して唄うだけで、観客が殺到したのだ。

テレビ前夜、人気スターの芸はステージでの実演か映画でしか観ることができなかった。

1949(昭和24)年、前年の『歌うエノケン捕物帖』に続いて、笠置が出演したのは、戦前、松竹のトップスターだった高杉早苗と、『愛染かつら』(38年)などで一世を風靡した二枚目・上原謙とのロマンチック・コメディ『結婚三銃士』(3月21日・新東宝・野村浩将)である。

就職難で苦労して、婚約者・若原春江との結婚もままならず、なんとか化粧品会社のセールスマンになった上原謙。

二枚目だけど、その自覚のないまま、猛烈女社長・清川虹子に見込まれて、持ち前の男前を武器に、キャバレーや美容院の女の子たちに取り入って次々と契約を獲得。

たちまちトップセールスマンとなる。

前半の痛快さは、のちの植木等主演『日本一の色男』(63年・東宝・古澤憲吾)のプロトタイプのようでもある。

シヅ子は売上に貢献するキャバレーの歌手役で、幼馴染の三味線の師匠・森赫子、化粧品会社社長の姪で口紅を開発中の研究員・高杉早苗と、上原謙をめぐって熾烈なライバルとなる。

シヅ子のキャラは姐御肌であるが、上原謙に初恋の人の面影をみて一目惚れをする純情娘でもある。