患者の困りごとを理解する力が一番大事

――まだ、かかりつけ医を決めていない人は、初診を受ける際、どうやってクリニックを決めればいいのでしょうか?

これは大変難しい問題です。私のクリニックは小児科・小児外科を標榜していますので、患者を診るのは中学3年までです。高校生になるとき、「どこの内科へ行けばいいでしょうか」とよく聞かれます。私は、近隣にある成人の内科クリニックの名前をすべてあげて説明しますが、どこがいいとはあまり言いません。実際分からないからです。

医師の実力とは何をもって決めるのかは大変むずかしいです。開業医の仕事は難病を治療することではありません。患者の話をよく聞き、困りごとを解決することです。あるいは解決できないときに、その病気を治せる病院へ紹介することです。ですから一番大事なのは、患者さんが何に困っているかを、理解する力です。こういう医師の力は、患者さんが実際に受診してみるまでなかなか分かりません。

一般的にドクターショッピングは、やってはいけない患者の行動とされています。ですが、自分と相性のいい医師に出会うまではドクターショッピングもやむを得ないと思います。


開業医の仕事は難病を治療することではなく、患者の話をよく聞き、困りごとを解決すること(写真提供:Photo AC)

――本の中に、「薬だけもらいたい患者」や「医師に対して疑心暗鬼になって来なくなる患者」が登場しました。医師の立場で、患者や保護者に伝えたいことはなんでしょうか?

さきほど述べたように、医師は患者の困りごとを解決したいのです。ところが、Aという薬がほしいとか、Bという薬はいらないとか言われると、力が抜けます。医者は街のドラッグストアではありません。

私のクリニックは多いときは、1日に150人くらいの患者さんが来ます。ご家族から見れば、流れ作業の3分診療に見えるかもしれません。それでも私は短い時間の中で、患者家族とコミュニケーションをとり、最善の投薬を考えています。36年間、医療をやっているのですから、少しは信頼していただきたいと思います。