父は明治大学ラグビー部出身、さらに兄、姉、妹もラグビー経験者という生粋のラグビー一家で生まれ育った川上剛右選手。4歳でラグビーを始め、中学校入学時にはプロ選手になることを目標に。まさにラグビー一筋の人生を歩んできた彼に選手としてのモットーを聞くと、「ラグビーだけが人生じゃない、と割り切る」という回答! 「仕事が楽しめない」「生活にメリハリがない」と悩む人は必見。人生がほんのり豊かになる、ニュージーランド仕込みのヒントがここに!

―好きなことをするなら、楽しまなきゃもったいない!
亡き父がラガーマンで、明治大学卒業後も社会人チームで短期間プレーしていたんです。兄と姉が既にラグビーをしていたので、僕も必然的に、物心つく前から始めていましたね。小学校に入ってからはバスケも始めました。自分で言うのもなんですけど、結構才能があったと思います(笑)。

中学でも両方続ける気満々だったのに、ラグビースクールに通えるのは小学生まででした。部活をどちらにするか悩んだときに、やっぱラグビーだな!と。その時すでに将来はプロの選手になると決めていたんですよね。幼心に抱いた夢を実現させて、今はラグビーでご飯を食べられている。そう考えると、自分、スゴイですね。よく諦めなかったな!と褒めてあげたいです(笑)。

もちろん、思うように結果が出ずに悩んだこともありますよ。でも、やめたいと思ったことは一度もなかったなぁ。悩んだときは決まって「自分は何のためにラグビーをしているんだ?」と考えるようにしているんです。答えは簡単で「好きだから」なんですよね。好きなら楽しまなきゃ!と気持ちを切り替えて続けていたら、おのずと結果がついてきた。だから僕は、どんなときもラグビーを楽しむ!を徹底しています。

—ラグビーだけが人生じゃない。あえて割り切ることも大切
プロになった途端、それまで趣味だったラグビーが仕事になる。その切り替わりがストレスになる人も多いようですが、僕はあえて日常的に「ラグビーだけが人生じゃない」と考えるようにしています。ラグビーしかない、と思うと、小さなことに一喜一憂して精神的にしんどい。でも実際、世界にはいろんな仕事があるわけで、「自分は何でもできる!」と考えればラグビーがまた楽しめるんですよ。

そうやって考えられるようになったのには、高校1年と2年の時のニュージーランド留学経験が大きいですね。合計で半年強ほど滞在していました。一番驚いたのが、負けやミスにまったく動じない外国人選手の精神力の強さ! 当時の僕を含め、日本人の多くは結構引きずってしまうんですよ。試合の翌日に友達と遊ぶ予定を入れていても、負けるとテンションが下がってキャンセルすることもしばしば。でも彼らは試合が終わるとケロっとして、「終わったー! 遊びに行くぞ!」と盛り上がる(笑)。

それは日常の過ごし方にも感じたことです。例えば休憩時間にもみんなでランチをしたり、カフェに行ったり、クラブハウスでゲームをしたり。ちょっとの時間も無駄にせず、楽しむことに余念がないんです。でも練習再開の時間になったらバシッとONモードに! メリハリの天才というか……ささいなことで生活を豊かにするコツをたくさん知っているんですよね。毎日のハッピー度を上げて、選手としてのパフォーマンスも向上させる。ああ、“真のプロフェッショナル”ってこういうことなんだな、と圧倒されました。

—年齢関係なく、リスペクトし合えるチーム環境が理想
留学をして驚いたことのもう一つが、上下関係がないこと。ニュージーランドではチームメートがみな平等。年齢関係なくお互いに意見し、冗談を言い合い、遊びに行くんです。トップダウン文化が根強く残る日本のラグビー部で育ってきた僕にとっては、まさに異文化! 

僕は個人的に、先輩方が積んできた経験、それによって培われた視野の広さに学ばせてもらうことがたくさんありました。だから年上を敬う文化をとても素敵だと思うし、誇りに感じているので、ニュージーランドの文化が絶対に正しいとは言いません。ただしトップダウンの環境では、無意味に威張ったり威嚇したりする人がいるのも事実。そういう先輩がいてこそ秩序が守られるなどの利点もあるけれど、物怖じして力を発揮できなかったり、ミスしてしまったり、やめたりしてしまう選手もたくさんいるので……。

ラグビーが今後もっと多くの人に親しまれるスポーツになるためには、たくさんの子供たちが参加する必要がある。厳しい上下関係をネガティブに感じる若者が多い現代だからこそ、選手同士がもう少しフランクに接し合える環境になっていったらいいな、と感じています。単に年齢が上だから偉い!ではなく、個人個人でリスペクトし合える関係がベストなのかな、と!

そのためにも僕は、先輩・後輩分け隔てなくコミュニケーションを取るよう心がけています。もともとの性格がおしゃべり好きなお調子者なので、特別に努力しているって訳ではないんですけど(笑)。みんなを誘って飲み会を開いたり、お茶をしたり……プライベートを多く共有したほうが、絶対的に絆が深まりますからね!

僕は一応、先輩には敬語を使うようにしていますが……後輩からはタメ口で話されるんですよ。それだけならまだしも、同チームの後輩、大嶌(一平選手)なんて、めちゃめちゃイジってきますからね! それほど慕ってくれているんだな、とポジティブに受け取るようにしていますが(笑)。

—ラグビー選手はおしゃれ好き!
多くのラガーマンに共通するのが“おしゃれ好き”で、趣味も共有し合っています。ちなみに僕、同チームの榎本(光祐)先輩と大嶌の3人でアパレルブランド「AHREA(アフレア)」を立ち上げたんです! 自分たちが本当に着たい服を考えていたときに、じゃあ作っちゃえばいいんじゃない?と。今は受注販売のみですが、いずれはもっと大きくしていきたい。インスタグラムの公式アカウント(@ahrea.jp)からオーダーできるので、ぜひ見てみてください!

それから、車屋を営みたいほどクラシックカーが好きだし、セカンドキャリアに備えてトレーナーの資格も勉強中。皆さん! ラガーマンの魅力は、ラグビーだけじゃないんですよっ(笑)。フィールドでは見られないラガーマンの素(す)をバンバン発信していくので、まずはぜひ僕のインスタグラムをフォローしてみてください!

川上剛右(かわかみ・ごうすけ)1994年4月28日生まれ、宮崎県出身。ポジション:ウィング、173cm/92kg。大のラグビー好きだった父の影響で、4歳でラグビーを始める。兄、姉、妹と本人のきょうだい4人全員が経験者というラグビー一家で育つ。中学卒業後、故郷を離れ東福岡高等学校へ入学。関西学院大学を卒業した17年、三菱重工相模原ダイナボアーズに加入。