【ニューヨークからお届けします】

 アメリカの水道水の45%に、基準値を超える危険な化学物質PFAS(ピーファス)が含まれていることがわかり、衝撃を与えています。EPAアメリカ環境保護庁が発表しました。

 有機フッ素化合物PFASは環境中で分解されず残り続けるため、「フォーエバー・ケミカル=永遠の化学物質」として知られています。体内にも蓄積し、肝臓や免疫系にダメージを与え、がんのリスクを増大させることがわかっています。

 厄介なことにPFASは熱や水、油や汚れに強く、非常に高い強度があるため、コーティング加工のフライパンから防水の服、食品包装、化粧品やシャンプー、おもちゃなど、あらゆる日用品に含まれています。私たちの暮らしは、PFAS抜きでは成り立たないと言っても過言ではありません。 

 EPAは今回の発表と同時に、水道水中のPFASをほぼゼロに削減する規制を定めました。しかしそのためには、全米の水道システムで、炭素ろ過や逆浸透膜浄水システムを設置する必要があります。これがどのくらい速やかに実行されるのか、疑問の声も上がっています。

 アメリカの水道は、インフラの老朽化や化学物質の混入により、常に水質汚染が大きな問題になってきました。ニューヨーク州北部のバッファローでは、古い水道管から鉛が溶け出し、多くの子供たちの血液中の鉛濃度が上昇しています。こうした古い鉛管は全米に広がり、1億8千万人が鉛汚染にさらされているという数字さえあります。

 PFASに関しても、これまで自治体レベルで問題視されていたのが、今回ようやく国が規制に乗り出しました。ではなぜこれまで放置されて来たのか? 環境活動家は「利益を優先してきた化学業界に責任がある」と指摘します。

 その化学業界が今後この規制に対して、法的な異議申し立てを行い、施行が遅れる可能性も懸念されています。

 もしトランプ前大統領が11月に大統領選に勝利した場合、就任後にこの規制を弱めるか撤廃することも考えられ、アメリカの水道水からPFASが完全に除去されるまでには、まだまだいくつものハードルが予想されます。

(シェリーめぐみ/ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家)