今年の八十八夜は5月1日。いよいよ新茶の季節です。古くから日本人に親しまれてきた緑茶は近年、健康効果が注目されています。たくさん飲んでおきたい一方で「飲みすぎると体に良くない」との声もありますが、なぜなのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに、緑茶の栄養や1日の適量などを伺いました。

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緑茶には体にうれしい栄養成分がたっぷり

 緑茶とは、煎茶、玉露、抹茶、ほうじ茶、番茶といった発酵させずに製造した日本茶の総称です。一般的な緑茶は「煎茶」で、日光を遮ることなく育った茶葉を蒸し、揉みながら乾燥させたもの。産地や蒸し方によって味わいは異なりますが、適度な渋みとすっきりとした味わいが特徴です。

 日本でのお茶の歴史は古く、平安時代にさかのぼるといわれています。近年になり、栄養についてさまざまな研究が進み、健康的な飲み物として海外でも人気です。

 緑茶の代表的な栄養に、渋みのもとであるカテキンがあります。さまざまな健康効果が期待されているポリフェノールの一種です。たとえば脂肪の吸収を抑える働き、脂質代謝を促進する働き、またコレステロールの吸収を抑える働き、活性酸素を除去する働きなど、肥満や動脈硬化の予防をはじめ、健康的な体の維持に役立ちます。

 また旨味成分のひとつであるテアニンにはリラックス効果が、苦み成分であるカフェインは覚醒作用や利尿作用が期待されています。ミネラルやビタミンも豊富で、体内の余分な塩分を体外へ排出するカリウム、コラーゲンの生成に欠かせないビタミンCなどが含まれるのも、うれしいポイントです。

緑茶が飲みすぎ注意といわれる理由

 このように、健康に良い栄養がたっぷり詰まっている緑茶ですが、「飲みすぎは良くない」といわれる理由はふたつ考えられます。ひとつめは、カフェインの過剰摂取です。適量なら覚醒作用で頭が冴えて眠気をブロックする効果が期待できますが、過剰に摂取すると体にとってデメリットがあると考えられています。

 個人差はありますが、たとえば、カフェインを大量摂取して、中枢神経系が過剰に刺激されると、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠が起こります。また、消化器管の刺激によって下痢や吐き気、嘔吐する可能性も。カフェインは鉄の吸収を妨げるため、食事中に大量に飲むこともおすすめできません。緑茶に限らず、コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどにもカフェインは含まれているので、成分表示などで確認しましょう。

 1日あたりの摂取許容量は、個人差が大きいことから日本では設定されていません。またカフェインが妊婦に与える影響についてもさまざまな議論が行われていますが、確定的なことは分かっていないようです。しかしWHO(世界保健機関)やイギリス、カナダではカフェインの制限量を設定。とくに厳しいカナダの数字を参考にすると「健康な人で400ミリグラム、妊婦は300ミリグラム」までと言われ、これを煎茶に換算すると健康な人は2リットルまで、妊婦1リットルまでとなります。

 飲みすぎ注意のふたつめの理由に、抹茶や玉露には、シュウ酸が多く含まれていることが挙げられます。シュウ酸を過剰に摂取すると、尿路結石の形成につながる場合があるからです。抹茶や玉露を大量に飲むケースは日常的にないと思いますが、尿路結石になった経験がある方はとくに注意しましょう。

 緑茶に限らず、体に良いからといって、度を超した摂取はデメリットをもたらします。ほっと一息つきたいときに、適量をおいしく楽しみ、緑茶のうれしい成分をいただきましょう。

Hint-Pot編集部