歌手の徳永ゆうき(29)が、昨年11月にデビュー10周年を迎えた。フジテレビ系バラエティー番組「千鳥の鬼レンチャン」(日曜・後7時)の出演をきっかけに、若い世代の人気が急上昇。イジられキャラとして定着し、欠かせない存在になっている。節目の年を数える徳永が音楽人生の転機や、デビュー後の出会いを告白。未来に向けた思いも語った。(加茂 伸太郎)

 独特のこぶし回しと声色、鉄道オタクの演歌歌手という個性豊かなキャラクターを武器に、地道な活動を続けてきた徳永が昨秋、節目の年を迎えた。

 「アッという間だな〜というのが第一印象です。演歌・歌謡界はヒット曲が出にくい時代ですが、その中で、よく10年やって来られたなと思います」としみじみ。「死ぬまで歌の世界で―という気持ちは持っていますが、どう転ぶかは分からない。10年を迎えられたことが本当にうれしいですし、ホッとした部分もあります」とかみ締めた。

 最近は「千鳥の鬼レンチャン」の影響で若い世代を中心に、お茶の間に広く知られるようになった。キャンペーンでショッピングセンターを訪れると、中高生からは「『鬼レンチャン』見てます」「『鬼レンチャン』で知って来ました」という声が飛ぶ。

 「『まさか、地元に徳永さんが来るなんて』と喜んでもらえた時はうれしいです。『CD初めて買いました!』という高校生世代も多くて。うれしい反面、人生初めてのCDが徳永ゆうきで大丈夫か?っていうのはあります(笑い)」

 番組では賞金獲得のため、名曲のサビを一音も外すことなく、10曲連続で歌いきることに挑むが、初出演時の苦い記憶は鮮明に残っている。重圧に耐えきれず、1曲も歌いきれずに終了。選んだ曲は福山雅治の「家族になろうよ」。まさかの序盤での失態だった。

 「歌い出して8音ぐらいで音を外す、という予想だにしていなかったことが起こりまして。『もう1回いけます?』って聞いたら、スタッフさんから『いいえ、終了です。お疲れさまでした』とバッサリ(笑い)。やり直せるだろうって軽い気持ちでいたので、終わった…と思いましたね」

 平均4レンチャン、5レンチャンだったが、昨年1月に念願の鬼レンチャンを達成した。「W杯で日本がスペインに勝った時ぐらい、周囲が盛り上がっていて。いろいろな人から『やったな!』って連絡が来ました。プレッシャーに弱いので、途中でしくじるやろうなって。成功した時のイメージが湧かなくて。何でクリアできたんだろうって、いまだに不思議に思いますね」

 昨年の「27時間テレビ」のオンエア後、全体のあいさつの場で、番組司会の千鳥・ノブ(44)から「徳永さんの伝説の0レンチャンから始まって、この番組は大きくなりました」というねぎらいの言葉があった。

 「ありがたいですね。今となっては、初回が0レンチャンで良かったです。なんぼでもイジッてくれ、とにかく面白くしてくれって思うタイプなので。(千鳥、かまいたちに)いつもイジッていただいて感謝です」

 奄美大島出身の祖父と両親の影響で、幼少の頃から演歌・歌謡曲を聴いて育った。2011年7月、友人に誘われて出演した「NHKのど自慢」(日曜・後0時15分)が人生の転機になった。番組チャンピオンになると、翌年3月の「―チャンピオン大会」でグランドチャンピオンに輝いた。

 「友達は予選で落ちてしまい、僕だけが受かったんです。グランドチャンピオンになった後は、レコード会社の人に声を掛けてもらい、デビューまでトントン拍子。当時は大好きな鉄道関係の仕事に就きたいと思っていたので、友達の誘いがなければ、歌い手としての活動はなかったです」

 13年、BEGINの比嘉栄昇(55)から楽曲提供を受けたシングル「さよならは涙に」でデビュー。4枚目のシングル「函館慕情」(16年)では、作曲家の水森英夫氏(74)から楽曲提供を受けた(作詞・麻こよみ)。水森氏の自宅でレッスンを受けると「こぶしは料理でいう調味料の一つ」という金言を授かった。

 「入れすぎると、味が濃いからおいしくない。少なくて薄すぎると、物足りなさを感じる。歌も一緒で多すぎるとゴチャゴチャして、歌が入ってこない。逆に少なすぎると、聴き手が『もう少しこぶし欲しいな』と感じてしまう。いいバランスで、こぶしを入れるポイントを作った方がいい、とアドバイスを頂きました。自分の中では、大きな出来事になりましたね」

 今年は20代ラストイヤー。3月9日に一般女性と結婚し、生涯の伴侶を得た。

 「一緒に過ごすことになっただけで、(心境としては)大きく変わらないです。普段通りに明るく楽しい、笑いの絶えない家庭を築けたらと思います」

 大きな目標とする15周年に向けて、勝負の5年が始まる。「ご縁を大切にしながら、いろいろなことに挑戦していきたいです。最近はバラエティー色が強いですが、『歌手・徳永ゆうき』をきちっとお届けできるように頑張ります」

 ◆徳永 ゆうき(とくなが・ゆうき)1995年2月20日、大阪市此花区出身。29歳。2013年「さよならは涙に」でデビュー。19年初のベスト盤、23年デビュー10周年アルバム「徳永がくる」を発売。18年に映画「バケツと僕!」でダブル主演。山田洋次監督の「家族はつらいよ」シリーズ(全3作品)に出演。趣味は鉄道撮影。特技は車掌ものまね、高速指パッチン。