●「私腹肥やし、悪質」

  ●弁護側、控訴しない方針

 志賀町発注工事の入札を巡る贈収賄事件で、加重収賄、官製談合防止法違反などの罪に問われた前町長、小泉勝被告(57)に対し、金沢地裁は17日、懲役3年、執行猶予5年、追徴金110万円(求刑・懲役3年、追徴金110万円)の判決を言い渡した。判決後、小泉被告は弁護士を通じて「判決を真摯(しんし)に受け止めている」とのコメントを出した。弁護側は控訴しない方針。

 判決理由で野村充裁判長は「最低制限価格を教える見返りに現金を収受し、私腹を肥やした犯行は悪質だ」と指摘。入札の公正さや町政への信頼を害した上、以前から同様の犯行に及んでいたことがうかがわれるとし、「常習性も認められ、強い非難に値する」と述べた。

 一方で、被告側から積極的に賄賂の支払いを求めておらず、計110万円という金額は同様の事案では高額とは言えないとし、「責任は相応に重いものの、直ちに実刑を選択すべきほどではない」と結論付けた。罪を認めて町長を辞職し、妻が今後の監督を誓約していることも考慮したとした。

 判決によると、小泉被告は2022年7月〜23年7月に行われた志賀町発注工事の入札3件に関し、西田組、米木工務店、青谷工業(いずれも同町)の3社に最低制限価格を教え、計110万円の賄賂を受け取った。昨年10月に逮捕され、同11月に町長を辞職した。

  ●問い掛け応じず

 小泉被告は紺色のスーツにグレーのシャツ、ストライプ柄のネクタイで出廷。証言台に座り、前を向いて判決内容を聞いた。野村裁判長から「執行猶予の5年を問わず、絶対に再犯をしないでください」と言われると、「分かりました」とうなずいた。

 判決後は報道陣の問い掛けには応じず、硬い表情のまま車に乗り込み裁判所を後にした。

 

  ●判決真摯に受け止める 小泉被告のコメント全文

 本日の判決を真摯に受け止めております。これまで多くの方々にご迷惑をお掛けし、ご不快な思いをさせてしまったことを心からお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。

 

  ●稲岡町長「常に自らの襟正す」

 小泉被告の判決を受け、稲岡健太郎志賀町長は「判決を厳粛に受け止め、常に自らの襟を正すことはもちろん、職員の服務規律、法令順守の徹底を図り、町民の信頼回復に全力で取り組む」とのコメントを出した。

 町は事件後、町長や副町長が最低制限価格を決定していた入札制度から、入札が済むまで最低制限価格が分からない仕組みに変更。4月1日からは基準額にランダム係数を掛けて最低制限価格を算出する変動型の制度を導入した。事件を受け、入札制度を改める動きは他の市町にも広がった。

  ●有罪確定なら退職金なし

 また、有罪判決が確定すると、小泉被告には町長辞職に伴う退職金が支払われない。志賀町や石川県市町村職員退職手当組合によると、支給されない4期目の退職金は、在任2年3カ月で計算上は1085万円だった。