●被災地へ思い「精いっぱいやるだけ」

 角界随一の人気を誇る相撲巧者が、約8年ぶりとなる十両の土俵で快進撃を続けている。元小結遠藤(穴水町出身、金沢学院大附属高OB、追手風部屋)は20日、獅司との見応えのある一番で会場を沸かせ、1場所での幕内返り咲きをたぐり寄せる大きな白星をつかんだ。直接口には出さないが、能登半島地震で大きな被害を受けた故郷への思いは強く、土俵で闘う姿を通じて被災地にエールを送り続ける。

 遠藤が獅司を転がすと、十両の取組ながら幕内以上の歓声が沸き上がった。左に回り込みながら、突き、押しで攻め返す。得意の左四つの形を作り、落ち着いて足を運びながら出し投げで土俵を這(は)わせた。

 十両単独首位を守るが、「毎日いっぱいいっぱいなので、それどころじゃない」と油断はない。今場所は古傷を抱える膝にテーピングをせず臨んでおり、師匠の追手風親方(元幕内大翔山)は「膝が悪くセーブしていたが、今場所はそこを意識せずに相撲を取れている」と好調の要因を分析した。

 取組を終えて支度部屋に戻った遠藤は、被災地への思いを報道陣に問われ、「(被災地の人が)感じることであって、僕はできることを精いっぱいやるだけ」と語った。