全国に広がっている住みます芸人の笑いあふれる地域協力活動にフィーチャーした、「47都道府県エリアプロジェクト(あなたの街に“住みます”プロジェクト)」をレポートする本連載。

 今回は、愛媛県の魅力を発掘し、地域活性化に貢献する活動をしている愛媛県住みます芸人の“伊予ノ家うっつん”さんをクローズアップ! 住みます芸人として活躍したくて吉本興業に入社した、愛媛愛溢れる芸人の奮闘に迫ります。

愛媛県住みます芸人の伊予ノ家うっつん

愛媛県住みます芸人
伊予ノ家うっつん

いよのやうっつん|1990年10月31日生まれ。愛媛県松山市出身。ピン芸人。フリーを経て2018年に吉本興業所属。NSC大阪40期扱い(一般)。芸歴6年。同期は、令和ロマンなど。趣味はバイク、釣り。特技は戦国武将の逸話、利きカップ焼きそば。2023年に「伊予ノ家うっつん」へ改名。

住みます芸人歴:2018年6月〜
活動拠点:愛媛県松山市
主な活動:愛媛県内でのイベント・テレビ・ラジオ出演や地方創生プロジェクト【村上村】を進行中。

テレビ:「ふるさと絶賛バラエティ いーよ!」(テレビ愛媛・「村上村」コーナーでレギュラー)、ラジオ:「ひるはま」(新居浜FM・木曜日レギュラー)

X(旧Twitter):@taku_utsunomiya
YouTube:うっつんザ・ワールド

【愛媛県】
愛媛県は、瀬戸内海に面し四国の北西部に位置する魅力的な県。自然豊かで、特に瀬戸内海国立公園や足摺宇和海(あしずりうわかい)国立公園など、多くの国立・国定公園があります。風光明媚な瀬戸内海には、島々が点在し、本州と結ばれているしまなみ海道はサイクリングの名所としても人気です。日本最古の温泉の一つ「道後(どうご)温泉」や、愛媛みかんをはじめとする柑橘類の生産が有名で、特にみかんの品質は国内外で高く評価されています。歴史と自然、そして人々の温もりが融合した魅力的な地域で、伝統的な祭りや文化イベントが数多く開催されています。最近では、移住者数が増加傾向にあり、特に若年層の移住が活発。地方創生に向けた取り組みが進んでおり、新たな住民と地域が共生する環境が整ってきています。

愛媛県のおもしろリーダーに俺はなる!!!

 愛媛県で生まれ育ち、地元に根ざした活動を続ける“伊予ノ家うっつん”。現在、愛媛県住みます芸人として活動していますが、実は、東京や大阪での活動経験がない珍しいケースのよしもと芸人なんです。地元でのフリー活動を経て、2018年に吉本興業に所属し、住みます芸人としてのキャリアをスタートさせました。一般的な住みます芸人とは異なり、大都市圏での経験を経ずに、地元愛媛での活動に専念するうっつんさんにお話を伺いました。

| 地元愛、芸人魂:伊予ノ家うっつんの歩み

 うっつんさんが住みます芸人を志したのは、何よりも愛媛県への愛から。山と海に恵まれ、都会的な魅力も兼ね備えたこの地で、釣りやバイクを楽しむ日々……。ある日、地元への恩返しとして、地域貢献で活躍する「住みます芸人」の道を決意し、行動に移したそうです。

吉本興業に入ったきっかけの一つなんですけど、実は、『住みます芸人』になって活躍したいと思ったからなんですよ」と、うっつんさんは話し始めました。

とにかく、愛媛県が好きなんです。山もあり、海もあり、都会的な部分もある。こんな住みやすい場所って、ほかにはないでしょう? ほかに住んだことがないのでわかりませんけど(笑)。

 食べ物は美味しいし、人は優しい。趣味の釣りもバイクも存分に楽しめる土地です。生まれ育った場所で、いい思い出も、そうでない思い出もたくさん詰まった場所。家族や友達もいる。全部があったかいんですよね。

 それと、僕自身が学生時代から芸人になるまで、決して人に褒められるようなことをしてこなかったんです。むしろ地域の皆さんに迷惑をかけて生きてきた……。そんな僕だから、住みます芸人になって、少しでも罪滅ぼしといったらアレですけど、地元・愛媛に恩返しできたらなと思っています」と、住みます芸人の道を選んだ背景を話してくれました。さらに芸人になった経緯を続けます。

もともと、愛媛県で幼なじみとコンビでフリーで活動していたんですが、愛媛県の住みます芸人の先輩や社員の方と知り合い、それで吉本所属になり、所属と同時に住みます芸人になったんですよ。なので、いわゆる同期と呼べる人たちには会ったことがないんですよね……」

 同期の芸人たちに会ったことがないというのは珍しいケースです。

「令和ロマンなどが同期にあたるんですけど、プロフィールには書くんですが、実際に仕事で絡むこともなくて……。東京や大阪での活動に憧れがないとはいいませんが、住みます芸人として、愛媛に誇りと愛情を持って日々活動しています

| 地域性が生かされまくりのエンターテイメントを経験!?

 それでは、住みます芸人としての活動を通じて、愛媛県にどのような影響を与えているのでしょうか?

愛媛県は、県内でも地域によって特徴が違うんです。造船や製紙が盛んな東予(とうよ)地区、県庁所在地の松山市や林業の盛んな久万高原町(くまこうげんちょう)のある中予(ちゅうよ)地区、鯛の養殖など漁業で有名な南予(なんよ)地区に分かれており、海と山に近くて、都会的な部分もあり、住むにはとてもバランスの取れた場所になっています。

 なので、イベントのお仕事をいただく場合は、地域によって、様子が変わってくるんです。お城に関わるイベントや海沿いでのお祭りなどを中心に出させていただいているんですが、結構特徴のあるイベントが多くて……。なかでも印象的なイベントは、宇和島(うわじま)市のお祭りで、近海で獲れた鯛やブリ、カンパチなどをイベント会場の目の前の川に囲いを作って放流して、それを掴み取り!!!!? するというプログラムがあったんですよ! 正直、最初に見たときは度肝を抜かれました。すげぇお祭りでしたね(笑)」

 イベント以外にも、最近ではテレビ・ラジオの出演も増えてきたとか。

「テレビでは、愛媛で働く外国人を取材する番組にも関わり、道後温泉や内子(うちこ)の街並みなど、愛媛の歴史を感じる場所を紹介しています。ラジオでは、同じ愛媛県住みます芸人で吉本新喜劇の“もりすけ”さんと新居浜(にいはま)市で県内外のリスナーに向けて放送しています」

新居浜FMで「ひるはま」というラジオ番組の木曜日パーソナリティを担当させていただいています。オダウエダがゲストで登場してくれました。
「新居浜FMで『ひるはま』というラジオ番組の木曜日パーソナリティを担当させていただいています。オダウエダがゲストで登場してくれました」

| 愛媛愛が止まらない! Jリーグ愛媛FCの公式応援芸人としても活動

「実は、愛媛FCの公式応援芸人としても活動しているんで

 もともと学生時代は野球をしていたうっつんさん。サッカーのことはまったくわからなかったそうです。

ある日、愛媛FCのサポーターの方に試合観戦に誘われて行ってみたところ、すっかりハマってしまいました。こんなに熱中するとは思わなかったですね。それ以来、プライベートでも応援に行くようになり、サポーターの皆さんとも仲良くさせていただきながら、少しずつサッカーのことを覚えていって、ついには公式応援芸人として活動することになりました!

 愛媛県内のJリーグチームについて伺いました。

愛媛県には愛媛FCのほかにFC今治というチームもあります。昨シーズンまで2年間は、両チームがJ3という同じリーグに所属しており、県内同士の戦いである『伊予決戦』は、10,000人近くの観客を動員するほどの盛り上がりを見せていました。まさに良きライバルですね。ハーフタイムにはゲストの先輩方とPK対決を行ったりして、非常に楽しい時間を過ごしました」

愛媛FCの公式応援芸人としても活動している愛媛県住みます芸人の伊予ノ家うっつんさん。大一ガスpresents柑太パークの総合MCとして、キックオフ3時間前の開園時から、キックオフまでの時間、スタジアム外のイベントを盛り上げさせていただいております。写真は「しずる」と「おばたのお兄さん」とニンジニアスタジアムにて。
「愛媛FCの公式応援芸人として活動していて、大一ガスpresents柑太パークの総合MCとして、キックオフ3時間前の開場時から、キックオフまでの時間、スタジアム外のイベントを盛り上げさせていただきます。写真は“しずる”と“おばたのお兄さん”と、愛媛FCのホーム・ニンジニアスタジアムにて」

「『地元のチーム』の戦いって、こんなに熱いんだって、サポーターの皆さんと交流しながら、試合の興奮や楽しさを共有することができ、とても充実した時間を過ごさせていただいています。公式応援芸人として活動することは、本当にありがたくて、多くの人々と『地元』の魅力を分かち合うことができているのは、住みます芸人になれたからだと思っています」。うっつんさんにとって、サッカーはただのスポーツではなく、地域社会を一つにする力を持つ、地域貢献活動の一部となっているようです。

| 「村上村」プロジェクト: 空き家問題と耕作放棄地の再生に挑戦

 今、住みます芸人として力を入れている「村上村」というプロジェクトがあるそうです。

愛媛県今治市のサイクリングの聖地と呼ばれるしまなみ街道にある『大島』という島で行っているプロジェクトなのですが、なんと、ここは吉本の大先輩、あの“村上ショージ”師匠の出身地なのです。その大島は人口の減少による空き家の増加や高齢化による耕作放棄地の増加が大きな問題となっています。師匠が一念発起して、ご自身の理想の“村”を作ろうとしているプロジェクトなんですけど、僕もお手伝いさせていただいています

【大島】
愛媛県今治市に属する大島は、「しまなみ海道」の一部で、サイクリストや観光客に人気の島です。瀬戸内海に浮かぶこの島は、美しい自然景観と歴史的な名所が魅力的で、特に海賊・村上水軍に関連する遺跡が有名です。亀老山(きろうさん)展望台からは、壮大な来島(くるしま)海峡大橋の眺めを楽しむことができ、島内では新鮮な海の幸を味わうこともできます。また、大島石という名産品もあり、その美しい石材は多くの建築物に使用されています。

空き家を活用した拠点をDIY

『村上村』プロジェクトでは、今ちょうど、村上ショージ師匠と、同じ愛媛県住みます芸人のもりすけさんと一緒に、空き家を活用した、地域の方や、サイクリストの交流の場、情報発信の拠点を作っているところなんです。

 自分たちで空き家をリフォームして、作っているのですが、これがめちゃくちゃ大変なんです……。壁や天井を塗ったり貼ったりする作業は、クーラーを外しているので夏は特にキツかったですね。一台しかない扇風機をもりすけさんと取り合いしていました(笑)。でも、ショージ師匠の同級生の方や、お友達の一級建築士の方の協力のおかげで、拠点もそろそろ完成です!

 そこでイベントも行う予定なので皆さんも旅行がてら遊びに来てくださいね

空き家を活用した「村上村」プロジェクトの拠点をDIYで改修しているところです。一緒に作業しているもりすけさんが、初日に大遅刻してきたときには、先行きが不安でしたが、なんとか形になってきました。
「空き家を活用した『村上村』プロジェクトの拠点をDIYで改修しているところです。黙々と作業に没頭しております。一緒に作業しているもりすけさん(左)が、初日に大遅刻してきたときには、先行きが不安でした……が、なんとか形になってきました」

レモン畑の再生

 耕作放棄地となった畑を復活させ、新たな特産品開発に取り組む『村上村』プロジェクトですが、レモンの栽培は大変だと聞いています。

拠点づくりと並行して、耕作放棄地の問題にも取り組んでいて、何年も放置されたレモン畑をお借りして、レモン作りも開始しました。瀬戸内海に囲まれた大島は、柑橘を育てるのに適しているんです。肥料を撒いたり、雑草を刈ったり、剪定をしたり、一年中やることだらけです。

 15kgある肥料を持って山道を歩く……、刈っても刈っても伸びてくる雑草……、さらに、皆さん知らないかもしれませんが、『レモンの木の枝にはトゲがある』のです! そのトゲに刺されながら剪定……。

 どれもめちゃくちゃ大変ですが、そのレモンを使って大島の新しい特産品を作りたいので、みんなで頑張っています。特にショージ師匠が作業をめちゃくちゃ頑張ってくださるので、僕ももりすけさんもサボれないですよ……。

 実は、そのレモンを使った商品なんですが、元・和牛の水田さんと一緒に開発することになりましたので、今後の進展に期待してください!

芸人を続けてきてよかった瞬間

 辛い作業が続く日々ばかりで、「本当にこれが芸人の仕事なのか?」と思ってしまったこともあるそう。しかし、悪いことばかりではありませんでした。

そんな『村上村』プロジェクトで、僕の芸人人生を変える出来事が起こったのです。

 実は僕の芸名の“伊予ノ家”は、昨年村上ショージ師匠がつけてくださったものなんです。吉本興業に所属したばかりの得体も知れない芸人だった僕に、名前をくださいました。フリーでやっていたら、絶対こんな好機はなかったでしょう! くすぶり続けていた僕に……師匠のあたたかさ、とてもありがたく思いますし、光栄なことです」

伊予ノ家うっつん。愛媛県出身で愛媛県住みます芸人の僕にピッタリじゃないですか? 初代伊予ノ家として何年後かの愛媛県には伊予ノ家一門が溢れるように頑張っていきます!

伊予ノ家うっつん

 愛媛県出身で愛媛県住みます芸人の僕にピッタリじゃないですか? 初代伊予ノ家として何年後かの愛媛県には伊予ノ家一門が溢れるように頑張っていきます!

住みます芸人としての使命感

 「地元愛媛の新たな魅力を発見し、外部の視点を取り入れることで、より深い情報を提供していきたい」と、考えているうっつんさん。住みます芸人として大事にしていることは何でしょうか。

大事にしていることは、まず学ぶということです。長年ずっと同じ場所に住んでいるので、当たり前になっていることが多すぎるんですよね。愛媛県外の方からしたら驚くことでも自分にとっては当たり前みたいなこともたくさんあるので、そうなりすぎないようにしています。そのほうが、愛媛県を他県の方にアピールするときに、より深い情報をお伝えできると思うので。

 そして、県外や外国の方からのお話を聞くことも学びになりますね。自分では気づかない愛媛県の魅力を教えてくれたりもするので、大切にしています。住みます芸人を始めてから、『実は愛媛県のこと、あんま知らんかったな』と思わされることもたくさんありました」。テレビの仕事を通して、対外的な学びや地元の素晴らしさに気づくことが多くなったそうです。

2018年に西日本豪雨災害があり、愛媛県内もかなりの被害を受けました。

 仮設住宅に住むことになった方もたくさんいらっしゃいました。

 そこで、住みます芸人として、仮設住宅をまわり、お笑いライブをさせてもらったり、地域の方と交流させてもらったんです。そのときの皆さんからの『ありがとう』や『面白かった』という言葉は一生忘れることはないと思います」。地元の人々のあたたかさも感じながら、住んでいる人に喜んでもらうことを大切にしたいと、うっつんさんは胸を熱くして話してくれました。さらに話は続きます。

空き家のリフォームは終わりに近づいてきたので、今はレモンを使った新商品、特産品の開発に力を入れているんです。地域の皆さんに喜んでもらえる商品を考え、

・住みます芸人だからできる方法で地域を盛り上げる。
・地域の方にも、遠方から遊びに来てくれた方にも楽しんでもらえる場所を作る。
・移住を考える方の後押しをする。

 といった活動を『村上村』を拠点にやっていきたいです。

 全国的にも山間部や島しょ部の人口減少や、空き家の問題、耕作放棄地の問題は増えてきていると思うんです。なので、大島だけの問題ではなく、全国のそういった場所のお手本になれるように、素晴らしい村を作っていきたいんですよね

 最後に、今後の展望について伺いました。

住みます芸人になって、僕のキャリアではなかなか一緒に仕事できないような先輩方とお仕事ができようになりました。村上ショージ師匠や水田さんとロケに行ったり営業に行ったりできるのはめちゃくちゃうれしい経験です。ショージ師匠におかれては、名前も授けていただきました。住みます芸人の活動で、人生がどんどん変わっていっているんです! だから、恩返ししたいんです。

 今の僕にとって、愛媛県への恩返しって、何ができるだろうって考えたんですが、『愛媛県のおもしろリーダーになっていくこと』を目標に頑張っていきたいと思います。

・愛媛県内でのテレビやラジオにどんどん出る。
・イベントで誰よりも盛り上げるタレントになる。
・知名度を上げる。

などといったことももちろん大切な目標なんですが、愛媛県民を引っ張っていけるリーダーのような存在になっていきたいと思っています。

 愛媛県は素晴らしい場所です。僕も大好きです。

 ですが、問題ももちろんあります。

 『山間部、島しょ部の人口減少』『高齢化による耕作放棄地の増加』『商店街の衰退』……そういった問題から目を背けるのではなく、問題にみんなで取り組むために先頭に立てるリーダー。

愛情を持って、ダメなところはダメだから直そうといえる強いリーダー。

この人と一緒になら私もなんとかしたいと思ってもらえる愛されるリーダー。

そういう存在の住みます芸人になっていきたいです


 愛媛県の「おもしろリーダー」として、地域の問題に立ち向かい、解決へ導く存在を目指すうっつんさん。今後、県民とともに歩むリーダーが地方創生の現場から、地元愛と芸人魂で、成功へと歩んでいきます。挑戦はこれからも続きます。今後のうっつんさんにご期待ください。