《白い風景―原初の地球》霧の彫刻 #47769、オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト 2023、 姫路市立美術館、兵庫、2023年 ©Fujiko Nakaya ©Himeji City Museum of Art

2022年からの3ヵ年計画で取り組まれてきた、「庭園アートプロジェクト 中谷芙二子 霧の彫刻」。三部作の3年目となる今回のテーマは、「体・音・光」です。

「霧の彫刻」は、人工的に発生させた霧を用いたアート作品です。ひとたび霧が生まれれば、見慣れた光景はまったく違う様子に変化し、作品は私たちに驚きや気づきを与えてくれます。

霧に包まれて視界が真っ白になったり、肌に水滴が触れる爽やかな感覚を得たり。作品と触れ合うこと自体が楽しく、新たな美術の体験ができます。

見どころ①中谷芙二子氏とはどんなアーティスト?

《白い風景―原初の地球》霧の彫刻 #47769、オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト 2023、 姫路市立美術館、兵庫、2023年 ©Fujiko Nakaya Photo by Shiro Yamamoto

「霧のアーティスト」として世界に知られる中谷芙二子(なかや・ふじこ)さんは、1933年、北海道札幌市生まれ。雪の研究で知られる実験物理学者・中谷宇吉郎さんを父に持ちます。

1970年、大阪万博ペプシ館で人工霧を作るプロジェクトを行い、初めて「霧の彫刻」を発表しました。以降、中谷さんは半世紀以上にわたって、霧を用いて作品を制作しています。

「いま、 切実に問われているのは、人間と自然との間の信頼関係ではないかと思う」*と語る中谷さん。汚染される自然環境から離れてバーチャル空間へと移行しつつある私たちに、作品を通して自然と触れ合うことを促してくれているように思います。

* 中谷芙二子「応答する風景 霧の彫刻」 (『霧の抵抗 中谷芙二子展』2019 年 2 月、フィルムアート社)より

見どころ②身体で触れる「霧の彫刻」

平井優子 ダンス×森重靖宗 チェロ× 中谷芙二子《白い風景―原初の地球》霧の彫刻 #47769−Yoin(余韻)− 2023年11月5日パフォーマンス風景 ©Fujiko Nakaya ©Yuko Hirai ©Yasumune Morishige

空気の流れに応じて刻々と姿かたちを変える「霧の彫刻」は、人工物でありながら自然のものでもあります。風に乗って遠ざかる霧を追いかけてみたり、反対に霧に追いかけられたり、本当に「自然と触れ合う」体験ができるのです。

美術作品は「目で見る」のが一般的ですが、本作は「全身を使って」鑑賞してみましょう。たとえば、霧の細かい水滴が、ふわりと肌に触れる優しい感覚。または、濡れた肌が乾くときの、スーッと冷たい爽やかな感覚。大きく息を吸い込んだときの、水の匂いや湿り気。原始的な感覚が呼び起こされる体験ができるはずです。

霧と遊ぶ感覚で楽しめるので、小さなお子さんと一緒に訪れるのもおすすめです。大人の方も、童心に返って霧と遊んでみてはいかがでしょうか。

見どころ③ダムタイプ創設メンバー・高谷史郎氏とのコラボ

《白い風景―原初の地球》霧の彫刻 #47769、オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト 2023、 姫路市立美術館、兵庫、2023年 ©Fujiko Nakaya ©Himeji City Museum of Art

会期後半には、アーティストグループ「ダムタイプ」の創設メンバー、高谷史郎さんとのコラボレーションを予定しているそうです。

高谷さんは「ダムタイプ」の活動と個人の制作活動を並行して行い、さまざまなメディアを用いたパフォーマンスやインスタレーション作品の制作に携わってきました。中谷さんとも度々コラボレーションを行っています。

冒頭でも触れたとおり、今回のテーマは「体・音・光」。高谷さんの問題意識やこれまでの作品とも親和性が高いテーマのように思います。お二人のコラボが姫路市でどのような形で実現するのか、今からとても楽しみです。

展示情報

庭園アートプロジェクト 中谷芙二子 《白い風景―原初の地球》 霧の彫刻 #47769 Series 2

会場:姫路市立美術館
会期:2024年4月27日(土曜日)から12月1日(日曜日)まで
開園時間:午前10時から午後5時まで
休園日:毎週月曜日(祝日・休日の場合を除く)、7月16日、8月13日、9月17日、9月24日、10月15日、11月5日
観覧料:無料

霧の発生時間:午前10時00分から午後5時00分の間、1時間に2回霧が発生。詳細スケジュールは公式サイト参照。

プロジェクト公式サイト:庭園アートプロジェクト 中谷芙二子 《白い風景―原初の地球》 霧の彫刻 #47769 Series 2