日本マイクロソフトは3月5日、AIアシスタントサービス「Microsoft Copilot」を紹介する報道関係者向けのイベントを開催した。Microsoftの開発部門から篠塚祐紀子氏が登壇して、Copilotの概要を説明した。

●そもそもMicrosoft Copilotとは

 Microsoft Copilotは、ChatGPTのような対話型のアシスタントサービスだ。AIと会話するような対話型の画面を備えていて、Web検索機能を備えている。Web検索や書類の要約、文章作成といったタスクを手助けしてくれる。

 マイクロソフトはCopilotブランドのチャット機能をWindows 11やOffice 365などのさまざまなサービスに統合している。

 スマホでは「Bing」アプリで早期にCopilotの提供を開始したが、2023年末に専用アプリの「Copilot for Mobile」が登場した。また、2024年2月にはOffice 365のモバイル版でもCopilot機能が利用できるようになった。

●ChatGPTとMicrosoft Copilotの違い

 Microsoft CopilotはマイクロソフトがOpenAIと共同開発した、マイクロソフトのサービスだ。一方で、ChatGPTはOpenAI自身が開発、提供するサービスだ。

 Microsoft CopilotもChatGPTも、基本的な対話応答の仕組みは共通している。ユーザーの入力を理解して返答を生成するLLMには、OpenAI製の「GPT」シリーズを採用している。

 Microsoft Copilotの特徴として、検索エンジンとの統合が挙げられる。GPT-4を核としながらも、「Prometheus」という基盤技術によって検索エンジンと連携する。つまり、ユーザーの質問を検索クエリとして読み解いて、AIが検索結果をまとめる機能が組み込まれている。法人向けのCopilotでは、自社のクラウドストレージに保管されているデータを参照して回答するサービスも提供している。

●Copilotは何に使える?

 ビジネスなら仕事の調べ物をしたり、資料を要約したり、メールのメッセージを下書きしたりできる。日常生活では、旅行のための調べ物や夕飯のレシピを考えてもらうこともできる。

 Copilotは、さまざまなタスクに対応できる。

Copilotの主な用途

・Webサイトの要約

・PDFの要約……BingブラウザのCopilotでPDFの要点を聞ける

・翻訳……シーンに合わせた状況を翻訳できる

・画像の分析……グラフも画像認識して説明できる

・画像の作成……文章を入力して画像を生成できる

●スマホならではの便利な使い方

 篠塚氏は「インターネットの環境さえあれば、どこでも使えることがMicrosoft Copilot魅力だ」と説明する。Windows PCで提供しているCopilotも、モバイル版のCopilotも共通の仕組みで動作しているため、返答は基本的には共通だという。

 普段持ち歩いているスマホアプリだからこそ、使いやすい状況もあるだろう。Copilotの対話形式は、スマホのメッセージアプリと同じように表示されるため、親しみやすいという点がある。

 スマートフォンだからしやすい活用方法として、「マルチモーダル」な特性を生かしたやりとりがある。マルチモーダルとは、テキストだけでなく、写真や音声といったフォーマットでAIと対話できることだ。例えば、写真を撮ってそれに関する質問をできる。

 篠塚氏の個人的な体験として、音声検索が役立ったシーンもあったと話す。雨の日に傘を片手に持ち、両手でフリック入力できないときに、篠塚氏は音声検索で「晩御飯の総菜が買える店は?」と質問した。Copilotはチャット形式で応答を返してくる。検索で得た情報をタップしなくても回答が得られて便利だったという。

●Microsoft直伝、Copilotを使いこなすコツ

 チャットAIからよりよい返答を引き出すためには、適切な“入力”を与える必要がある。つまり、質問内容を工夫すると、よりよい回答が引き出せる。このような質問テクニックは、「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれることもある。

 具体的には、3つの要素を踏まえるといい。

1. 目的を説明する

2. 場面と役割を設定する

3. 回答の表現や出力方法を伝える

 1の目的を説明する方法、例えばWebサイトの内容を知りたいなら「このWebサイトを要約して」と伝えるのが最もシンプルな伝え方だ。より具体的に、「この資料から、(知りたいテーマ)の利点を3つ列挙して」といったような質問の仕方をするといいだろう。

 また、2の場面と役割の設定は、例えばレシピを知りたいときに、ただ「レシピを教えて」と質問するのではなく、「家にある食材を使った、トマトベースのパスタのレシピを教えて」といったような聞き方をするとよい。

 また、Copilotに役割を与える方法も効果的だ。回答者の状況を想定して「中学2年生の理科の先生になったつもりで回答して」という聞き方ができる。

 3の回答の表現や出力方法については「かしこまった表現で」「カジュアルなトーンで」といったように敬意の込め方や文体を指定できる。また、情報を分析して「表にまとめて」といったように、自然文以外の形式で回答も求めることも可能だ。

 ただし、プロンプトエンジニアリングにこだわって、精緻な質問を組み立てる必要はない。要するに、適切な情報量でチャットAIに意図を伝えられれば、それで十分だ。

 篠塚氏は「日々の悩みやお悩み解決みたいなことを話してみても面白いです。友達に文章を書きたいんだけど、どうしたらいいかな、みたいな簡単なことでもいいんです。ぜひ相談に乗って、自分のより求めているものを一緒にパイロットと対話しながら探していただければ」と語った。