■技術革新などは長期的な流れ

 先ほどちょっと触れた「コンドラチェフの波」は、大きな技術革新が数十年に一度程度の割合で出現し、人々の生活を大きく変えるという現象を指しています。例えばジェームズ・ワットが1769年に発明した蒸気機関は、のちの産業革命につながる大発明でした。

 エンジン自動車は1885年にダイムラーによる特許出願があり、1908年にヘンリー・フォードが最初の大量生産(モデルT)に成功しました。世界初の原子力発電所が稼働したのは1951年のことで、インターネットが商業用に使われ始めたのは1989年のことでした。

 このような大規模な変化は、元に戻ることがありません。いったん大きな変化が起こると、その影響は数十年も続くこともあります。蒸気機関は、蒸気船や蒸気機関車という移動手段の革命を起こし、さらに工場での大量生産も可能にしました。

 この変化が元に戻ることはなく、移動手段はより高速化し、大量生産や工場自動化はさらに進んでいきました。インターネット以降のデジタル化の流れは止まることがなく、スマートフォンがさらに進化することはあっても、昔の通信手段に戻るなどということはないでしょう。

 技術革新は、何らかの必要性があって起こるものです。便利な商品を使って豊かな生活をしたいという人々の願いがあったからこそ、様々な商品の大量生産を行うことが必要になり、その工場で大量のエネルギーを使う必要性があったからこそ、動力源としての蒸気機関(ボイラー)という技術革新が起こったのです。

 人々が長距離を短時間で移動し、貨物を長距離運送したいという願いがあったからこそ、蒸気船や蒸気機関車、エンジン自動車、飛行機などの輸送手段が登場してきたのです。なので、このような変化は「波」(元に戻って繰り返す)ではなく「流れ」(元には戻らない)と呼ぶべきなのです。

■環境問題なども長期的な流れ

 地球温暖化が問題として取り上げられるようになったのは、1985年の世界会議(フィラハ会議)であり、1988年の「気候変動に関する政府間パネル」設立以来とされています。

「気候変動枠組条約」が国連総会で採択されたのは1992年です。この問題は取り上げられ始めてから、世界的な流れになるまでに20年以上かかりましたが、今では引き返せない流れになっています。

 なにしろ今すぐに二酸化炭素排出の削減を始めたとしても、50年後、100年後の地球温暖化を「減速」させることにしかならないわけですから、今後ずっと続いていく「流れ」ということになります。