■金融サービスF社

 金融のバックオフィス業務を外部委託で請け負っている会社だ。F社が存在しなくなると、取引先はそれぞれの会社で当該業務の担当を抱えなければならず、経営上、大きなインパクトになる。そんな業界のインフラ的な存在を担っているのがF社のサービスの特徴である。

 しかし、価格交渉となるとスタンスは極めて弱気だ。取引先にとってはなくてはならない存在でありながら、提示する価格はこれまでの慣習価格。それもだいぶ昔に決めた金額であるため、その水準が妥当かどうかいまでは誰もわからない状態。また、取引先によってF社のサービスに感じるバリューはことなるが、どこの会社に対しても一物一価の定価を提示している。もう少し自社のポジションを活かした戦略的な値付けを行うとともに、こちらの提示する値段を受け入れてもらえない場合は取引を停止してシェアを追わないなど、強気の交渉スタンスにシフトできると利益率はぐっと上がる気配がある。

解くべき課題は4つ

■「意識」「価値」「手札」「交渉」

 前項に記載した事例をまとめると、問題は大きく以下の4つのタイプに類型化できる。


「意識の問題(A社)」
「価値の問題(B社)」
「手札の問題(C社、D社)」
「交渉の問題(E社、F社)」


 順に、「意識の問題」は、営業の行動原理の是正と、売上数量に偏重しない目標管理、「価値の問題」は、要求理解の段取りと、価値創造の仕組み、「手札の問題」は、売り方のバリエーションと、強弱をつけた儲けどころの設計、「交渉の問題」は、選ばれるための交渉ストーリーと、弱気の交渉スタンス、が解くべき課題になる。


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(下 寛和)