2016年から19年にかけてLVMHの売上高は、年平均成長率(CAGR)にして16.5%の割合で伸び続けた。2019年には536億7000万ユーロという売上高を記録したが、そのうちフランス市場が占めるシェアはわずか9%で、1位は中国で30%を占めた。次いで24%のアメリカ、19%のヨーロッパ(フランス以外)、7%の日本という結果になった。

 2020年のコロナショックを受け、LVMHの同年の売上高は前年比17%減の446億5000万ユーロまで低下した。その際に緩衝材としての力を発揮したのが、売上減少率3%に踏みとどまった「ファッション&レザーグッズ」部門である。「ワイン&スピリッツ」も同様で、減少率は14%にとどまった。その一方で、直営店や免税店の休業によって「ウォッチ&ジュエリー」の売上高は23%減少し、「セレクティブ・リテーリング」に至っては30%も減少した。

 しかし、2020年の終わりから21年にかけて中国の経済活動が再開され、それに次いでアメリカとヨーロッパが徐々に日常を取り戻していったことで、グループ全体の業績も上向き始めた。2021年の1月から9月にかけては再スタートを切った事業活動も軌道に乗り、売上高は2019年の同時期を11%上回った。

「ファッション&レザーグッズ」は、業績変動の緩衝材としてのみならず、成長を加速させるアクセラレーターとしての役割も果たし、2021年の売上高は2019年の1〜9月と比べて38%増となった。それに次いで「ワイン&スピリッツ」の売上高も10%増加したが、「セレクティブ・リテーリング」は23%減とコロナ禍の影響を受け続けた。

 コロナ禍に新たに傘下に収めたティファニーの貢献によって「ウォッチ&ジュエリー」も回復を見せ、2021年1〜9月の売上高は前年同期比10%増と推定された。またティファニーの売上高は、2020年を通して40億ドル以上と微減にとどまった。