「私たちのねらいは、環境に優しくて倫理的であると同時に、伝統的なサヴォワールフェールに敬意を払いつつ、モダンでクリエイティブな新しいジュエリーを提案することにあります。クールベは、環境とテクノロジーという二つの柱に支えられています。ゴールドやダイヤモンドという、遍在性の高い資源を使って環境に配慮したジュエリーをつくるうえでテクノロジーの存在は欠かせません。電気回路の基板や電子機器から回収した金や人工ダイヤモンドがあるからこそ、私たちは地球に優しいジュエリーを提供することができるのです」

 クールベは、責任ある商品ラインアップとオンライン販売と並行して、独自の流通方法で商品を展開している。そのおかげで2018年に40万ユーロだった売上高は、2019年に200万ユーロを記録した。さらに2021年から22年にかけて倍増することが見込まれている。

 2020年3月、スタートアップ企業を支援する「レイズ・ベンチャーズ(Raise Ventures)」と、シャネルが出資していると噂される中国初の独立系広告代理店「ハイリンク(Hylink)」の支援により、クールベは850万ユーロの資金調達に成功した。これを機に、中国をはじめとするアジア市場への参入を果たす。2021年の夏には、中国語サイトが公開される予定だ。

 クールベはブロックチェーンの可能性にもいち早く目をつけ、真贋証明書をデジタル化してブロックチェーンに保存、管理している。これにより、販売する商品が盗品や模倣品・偽造品ではないことを迅速に見分けることが可能となる。

「ラ ブッシュ ルージュ(La Bouche Rouge)」も、フランスのDNVBの代表例といえる。世界最大のスタートアップキャンパス、ステーションFの「LVMHラボ」から生まれた初のコスメブランドの創業者ニコラ・ジェルリエは、プラスチックを使わないレザー製の口紅ケースと環境に優しい詰め替え用の口紅(ケースを再利用できる)をフランスで初めて開発し、2017年に販売した。

 ラ ブッシュ ルージュの革新性は、それだけにとどまらない。レザーケースや、画像をもとに口紅の色をカスタマイズするサービスもある。顧客がスマホのアプリやブランドの公式サイトから、お気に入りのドレスや靴、ハンドバッグ、アート作品、夕日の画像などを送ると、その色を再現した、シリアルナンバーとイニシャルが刻印された口紅が3日後には自宅に届く仕組みだ。