ラ ブッシュ ルージュは天然素材由来の環境に優しい処方設計でも知られ、口紅に加えて現在はスティックタイプのチークやアイシャドウ、フレグランスも展開している。ラグジュアリーと環境配慮、そしてクリーンさを実現したこのブランドの成功は、早くも大手ラグジュアリー企業の考え方を変えようとしている。ジェルリエは、次のように主張する。 

「世界の水の83%がプラスチックによって汚染されています。世界では、毎年無数の口紅が販売されては、ゴミとして捨てられているのです。これは環境にとって最悪の事態です。それでも私は、日用品にデザインと創造性を取り入れることでプラスチックによる海洋汚染を終わらせることができると信じています」

 ブランド立ち上げから5年が経ち、ジェルリエは自信を深めている。

「ラグジュアリーは格好良くてセクシーであるだけでなく、サステナブルにもなれます。私たちは目標を達成し、今では人類愛に根差したコミットメントとともに世界的な成長を遂げています。私はブランドを創業したときから、西アフリカのトーゴに一つでも井戸をつくることができれば、少なくとも何か一つは誇れることをした、努力は無駄ではなかったと胸を張れると自分に言い聞かせてきました。ラ ブッシュ ルージュは現在、アフリカの人々に清潔で安全な水を届けることを目標に掲げるNGOのオー・ヴィーヴ・アンテルナシオナルをサポートするために『キス・フォー・ライフ』というプロジェクトを立ち上げ、トーゴの農村部で暮らす人々に飲料水を届ける活動に取り組んでいます」

 ラグジュアリー分野で活躍するDNVBは、大手ラグジュアリー企業がなんとしてでも味方につけたい存在だ。商品やサービス開発のためのデジタルテクノロジーやクリエイティビティに関する経験は、他の傘下ブランドにとっての貴重な知見にもなる。またDNVBも、大手ラグジュアリー企業と手を組むことで資金面での支援が受けられ、さらに成長することができる。しかし、こうしたブランドがクリエイティビティを発揮するには、ブランドの自律性を尊重することが不可欠である。

<連載ラインアップ>
■第1回 コロナ禍が、米・欧・中のラグジュアリー業界にもたらした変化とは?
■第2回 1000万人がヴィトンの動画を視聴、ラグジュアリー業界で進むデジタル化とは?
■第3回 エルメスがキノコを使ったバッグを発表、ラグジュアリー業界の新たな生産モデルとは?
■第4回 LVMHはなぜ危機に強く、「業界リーダー」であり続けられるのか?
■第5回 ターゲットはデジタルネイティブ世代、DNVBのビジネスモデルとは?(本稿)
■第6回 グッチ、ラルフ・ローレンが参入、ラグジュアリー業界は、なぜメタバースに注目するのか

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(イヴ・アナニア,イザベル・ミュスニク,フィリップ・ゲヨシェ)