米メリーランド州ボルティモアで、大型コンテナ船が連絡橋に衝突した事故からおよそ7週間。今も船内には21人の乗組員が取り残されたままだ。

3月26日、シンガポール船籍のコンテナ船ダリ号が電力を喪失したことから操作不能となり、フランシス・スコット・キー・ブリッジに激突。橋は崩落し、橋の上で補修作業をしていた6人の建設作業員が犠牲となった。

BBCによると、20人のインド人とスリランカ人1人の乗組員は、ビザの制限、必要とされる上陸パスの不足、国家運輸安全委員会とFBIによる調査が進行中であることから帰国どころか下船すら許されていないという。

シンガポール海自役員組合(SMOU)とシンガポール船員組織(SOS)は、「ダリ号の船員が犯罪者扱いされ、精神的苦痛を受けていることを深く憂慮している」と合同で声明を発表。捜査の一環として船員たちが携帯電話を没収され、家族との連絡手段を断たれてしまったことが「さらなる士気の低下を招いている」とも述べたとMail Onlineは報じている。

船員の権利保護に取り組む非営利団体のジョシュア・メシック事務局長は「母国へ送金するためのオンラインバンキングもできない。自宅に来た請求書の支払いもできない。自分のデータも、人の連絡先もわからない。寝る前に子どもの写真を見ることもできない。本当に悲しい状況です」とBBCの取材に対して語った。

船内には様々な支援団体から、インドのお菓子や手づくりのキルトなどが差し入れられ、食事もケータリングで提供されているという。

船体に突き刺さっていた橋の残骸は今月14日に爆破処理され、事態の収拾に一歩近づいた。しかし、およそ3.7キロ先の港までどのように航行するのか、またその時期がいつになるかは未定のままだ。