友好関係を結んだ街のことを「姉妹都市」、学校のことを「姉妹校」、系列店のことを「姉妹店」などと呼びます。なぜ、親子や兄弟とは言わず“姉妹”と呼ぶのでしょうか?

「姉妹都市」について調べてみると、そのルーツはアメリカにあるとのこと。第二次世界大戦後に「本当の世界平和をもたらすには国レベルの交流では足りない、市民レベルでの交流が必要」だということで、当時のアメリカ大統領だったアイゼンハワー氏によって提唱されたのが「sister city」という取り組み。直訳すると“姉妹都市”です。続々と各都市が参加し、世界中にその輪は広がっていきました。

 なぜ“brother”ではなく“sister ”だったのか。これには諸説あるようですが、日本や英語には無い「名詞の性別」という概念が関係しているとの見方があるそうです。外国語教育を専門とする立命館大学政策科学部の有田豊准教授によると、「フランス語や、インド=ヨーロッパ語族の多くの言語には『男性名詞』や『女性名詞』という考え方があり、名詞には生物・無生物に関係なく性別があります。そして、『都市』は女性名詞です」とのこと。

 “city”(都市)という英語は元々、ラテン語で都市を意味する“cīvitātem”が古フランス語で“citet”に、さらにそこから中英語で“cite”、現代英語で“city”と変化していったそうです。ちなみに古フランス語の“citet”は現代フランス語では“cité”と変化したそうですが、現在では都市のことを“ville”と表現するのが一般的なようです。

 同様に「姉妹校」「姉妹店」もラテン語の女性名詞に由来する可能性があり、学校・店舗はラテン語において女性名詞にあたるのだそう。なぜラテン語やフランス語の名詞には性別があるのかについては、「諸説あるものの、はっきりとわかっていない」との回答が。また、男性・女性の分類についても「ほとんど法則性はなく、1つずつ覚えるしかない」とのことでした。

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 ふだん何気なく使っている言葉の“なぜ?”を調べると、なんとも興味深い言語学の世界にたどり着きました。ちなみにフランスやイタリアなど、ヨーロッパ圏では「対(双子)の都市」と表現する場合もあるそうですよ。

(取材・文=宮田智也)