新生活が始まる季節、春。新居での生活を始める人多いのではないでしょうか。

 引っ越しの際、もっとも重視するのは部屋の広さや間取りだと思います。しかし、中にはあまり考えずに決めてしまい「後悔した……」というケースも。

 今回、失敗談を語ってくれたのは昨年2月に結婚したばかりの都内在住の奈々子さん(仮名・29歳)です。

1LDKの部屋に引っ越すことを決定

 ※写真はイメージです(以下同じ)「交際中、私は実家暮らし。夫は友人とシェアハウスをしていたため、入籍後は新しく新居を探さなければいけませんでした。お互いに仕事が忙しかったこともあり、話し合った結果『子どもはしばらく先でいいよね』となったんです。

 なので、引越し先は互いの仕事場に近いことを優先し、山手線の駅から徒歩圏内のマンションを探しました」

 山手線の駅チカ物件は単身用のマンションが多く、さらに昨今の家賃高騰もあり、比較的新しい物件であれば15万円〜と高額です。予算オーバーになってしまうため、2人は1LDKの部屋を借りることにしました。

「1LDKでも家で仕事をするときは『寝室とリビングを使おう』と話し合い、その部屋に決めました。その部屋はリビングダイニングに寝室が隣接していて、すりガラスの引き戸で仕切られていました。

 山手線の駅から徒歩5分程度で13万円と予算内だったこともあり即決しました」

お互いにイライラが高まってしまう

喧嘩 しかし、後にこの間取りが悲劇を生むこととなったのです。

 2人が借りたマンションには、2つの部屋タイプがあったといいます。もう1つは玄関を開けてすぐ横に寝室があり、奥にリビングがある1LDK。本当は、そっちのほうがよかったという奈々子さん。しかし、すでに埋まってしまっていたため、もう1つのタイプの部屋になったといいます。

 リビングと寝室が隣接する物件に引っ越した奈々子さん。いったい、どのような問題があったというのでしょうか。

「擦りガラス1枚で仕切られただけなので、互いに違う部屋にいても常に同じ空間にいる感じでした。たとえば、私が寝ていたら夫が飲んで帰宅する音が聞こえてくるんです。リビングの電気を点けたら寝室まで灯りが漏れてくるので眩しくて眠れません。

 夫に『私が寝ているときは静かに帰ってほしい』と言うと、『朝、俺が寝てるときにそっちこそリビングで支度している音がうるさいよ』と逆に言われました」

 また、こんなこともあったといいます。それは奈々子さんが家に仕事を持ち込んで作業していたときのこと……。



夫の帰りも遅くなっていった

「翌日、会議で使うプレゼン資料を持ち帰ったんです。リビングで作業していると翌朝、出張で早く出る夫が寝室で寝ていて文句を言われました。最初、『電気がまぶしくて寝れない』と言われたので、電気を暗くして作業していました。

 そしたら、今度は『パソコンの音がうるさいよ』と言われたんです。イラッとしたけれど、彼の気持ちもわかるので何も言えず。結局、近くのネットカフェに行って作業しました」

 お互いに仕事も生活リズムもバラバラの2人。どちらかが悪いとわかっていれば喧嘩も起こるかもしれません。

 しかし、どちらにも言い分があるため、激しい喧嘩にはならなかったといいます。そんなことを繰り返しているうちに、2人には次第にストレスが……。しかし、いくら思い詰めても、家に帰れば同じ空間にいなければいけません。

「もし、これが同じマンションの別のタイプの部屋であれば、逃げ場もあったかもしれません。家に帰ると結局、顔を合わせないといけないし寝る場所も同じ。こんなことなら場所にこだわらずもっと広い物件を借りればよかった……と後悔しましたね。

 夫も同じ気持ちだったようで、だんだん家に帰る時間が遅くなっていきました。後に知ったことなのですが、家に帰りたくなかったため、夜まで開いているカフェで時間を潰していたようです」

夫婦でもパーソナルスペースは必要

仲直り このままでは夫婦仲が破綻してしまうかも……と感じた奈々子さん。夫と話し合った結果、ついに引っ越しを決めることとなったのです。

「結局、住んで1年足らずでそのマンションから引っ越しました。今、住んでいるのは会社からは少し離れている下町エリアです。築年数はそこまで新しくはありませんが、家賃は予算内。2LDKなのでお互いのプライバシーは守られています。今では寝室は別々ですが、離れ離れになったことで逆に夫婦仲が良くなったような気がします」

 以前はお互いに気を遣って、朝起きるときは音を立てないようにしていた2人。現在は平日は別々に眠り、休日前のみ2人で寝るようになったことでストレスはぐんと減ったと言います。

 たとえ夫婦でも「パーソナルスペースは絶対に必要」と語る奈々子さん。家の間取りは、住んでいる人の生活に大きな影響を与えます。

 たとえ賃貸だとしても、夫婦であればお互いのライフスタイルや将来の家族構成なども考慮して、長く住める家を見つけるのがよいでしょう。現在、引っ越しを考えている人はぜひ参考にしてみてくださいね。

<取材・文/結城>

【結城】
男女観察ライター。鋭い視点で世の男女を観察し、 夫婦問題からイタい火遊びまで、幅広いエピソードを華麗に紡いでいく。Twitter:@yuki55writer