マックス・フェルスタッペンは現在、レッドブルと2028年までの契約を結んでいるが、レッドブル首脳陣の混乱を背景に彼の”将来”はここ数週間、様々な憶測の対象となっている。

 レッドブルとそのF1チームの支配権を巡る権力争いが繰り広げられているようにも見える中、モータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコが機密漏洩に関与した疑いで退任させられる可能性が浮上した。

 これに対して、フェルスタッペンはもしマルコがいなくなれば、レッドブルからの離脱も辞さない姿勢を示唆した。

 フェルスタッペンはサウジアラビアで次のように語った。

「彼(マルコ)は僕にいつも、チームに残留しなければならないと示してきた。彼なしでは続けられない」

 フェルスタッペンの発言は、レッドブル上層部に対してマルコへの処分がもたらす結果について、明確な政治的メッセージを発したと見る向きも多い。

 フェルスタッペンの父であるヨスは、女性スタッフに対する不適切行為が疑われたクリスチャン・ホーナー代表の退陣を要求したが、フェルスタッペン自身はあまり明確な態度を示していない。

 フェルスタッペンが公にマルコを支持し、チーム離脱をほのめかすことの大きな意味をホーナー代表はよく理解している。

 しかしホーナー代表は、フェルスタッペンがチームに残りたくないと強く感じているのであれば、契約を盾にやみくもに拘束することはないと明言した。

「人生のどんなことでもそうだ。紙切れ一枚で、誰かをどこかに強制することはできない」とホーナーは言う。

「もし誰かがこのチームにいたくないと思っていたとしても、彼らの意思に反して無理矢理ここに連れてくるようなことはしない。それは、マシンオペレーターであろうと、デザイナーであろうと、ビジネスを支えるサポート部門の誰かであろうと同じだ」

「このようなチームに関わるには、献身と情熱が必要だ。マックスにはそれがある。彼は18歳の時からここにいる」

「彼のコミットメントと情熱は全く疑っていない」

 今回のホーナー代表の発言は、フェルスタッペンがチームとの契約を満了するまで在籍すると信じて疑わないと語ったサウジアラビアGP前の彼の姿勢とは明らかにトーンが変わっている。

 レッドブル本社の上層部では、チーム内部の問題がリークされ、プライベートな説明会を通じてメディアに情報が流されることへの不満が高まっていると理解されている。

 マルコがテレビを通じて停職の可能性について語ったことや、フェルスタッペンの離脱示唆、ヨスが新聞でホーナー代表を批判したことも、F1チームを運営する上で障害とみなされているだろう。

 当然フェルスタッペンは近年のレッドブルの成功を支える重要な柱のひとつだと見られている。しかしコース外での騒動が収まらず彼がチームを去りたいと望み、レッドブルが彼を引き留めるのに必要な代償を、支払うに値しないと判断する可能性もなくはないだろう。

 状況は理想的とは言えないものの、ホーナー代表はドライバーとの関係に影響はないと主張している。

「マックスとはまったく問題ない」

「緊張もストレスもないし、チームのみんなとガレージでリラックスしているのがわかる」

「それがサーキットでのパフォーマンスにも反映されている。だから、マックスとは何の問題もないんだ」

 これを機に、他チームがフェルスタッペンを引き抜こうと動いているが、ホーナー代表はマシンのパフォーマンスこそが今後どうなるかの決め手になると考えている。

「パドックにいるすべてのチームがマックスの獲得を望んでいるのは確かだ」

「でもトト(ウルフ/メルセデス代表)も言っていたように、最高のドライバーは常に最高のマシンに乗りたがるものなんだ」

「我々は(最高のマシンが提供できる)チームのひとつだ。マックスは今回グランプリ通算56勝目と100回目の表彰台を達成した。チームとして、我々は非常にうまく機能している」

「でも絶対はないんだ。ドライバーがいたくないと思えば他の場所に行くだろうが、チームとしては誰かがこのチームから降りたいと思う理由が見当たらない。彼には素晴らしいサポートがあるし、素晴らしいクルマで素晴らしい仕事をしていると思う」