雨絡みのレースとなったWEC6時間レースの決勝は、予選では6番手に沈んでいた7号車トヨタ(マイク・コンウェイ/ニック・デ・フリーズ/小林可夢偉)が、適切なタイヤ交換戦略を成功させて予選トップ3を独占したフェラーリ勢らを出し抜き、優勝を手にした。

 予選では地元フェラーリ勢が圧倒し、50号車のポールポジションを筆頭にトップ3を独占。その後方4番手と5番手には、ポルシェのペンスキー勢が並んだ。トヨタ勢は7号車が6番手、8号車が8番手と、厳しい戦いを強いられた。

 しかしコンウェイのドライブでスタートした7号車トヨタは、序盤のセーフティカー明けのリスタート時にポルシェの5号車を抜き、1回目のピットストップでフェラーリをオーバーカットするなどして3番手まで上げた。

 コンウェイからデ・フリーズにドライバー交代した後、7号車はフェラーリ勢2台に次ぐ位置につけた。

 そのデ・フリーズは、まさにファインプレイを見せた。イソッタ・フラスキーニのクラッシュにより出されたフルコースイエローが解除される際、最も早く反応してフェラーリを抜いて2番手に上がった。

 しかしイモラには徐々に雨雲が接近。コースを次第に濡らしていった。すると、そこかしこでコースオフするマシンが続出した。そんな中、カラム・アイロットがドライブする12号車ポルシェがコースオフしてグラベルにスタック。51号車フェラーリが、アンダーグリーンで真っ先にピットインし、7号車トヨタはこれで首位に立った。

 その直後バーチャル・セーフティカー(VSC)が宣言されると、トヨタ7号車も含めてその他のマシンもピットイン。トヨタ7号車には、小林可夢偉が乗り込んだ。このVSCは後にセーフティカー先導へと切り替えられた。

 ただこの時は各車ともドライタイヤを装着。しかしセーフティカー先導中に雨脚は強まる。

 レース再開時、路面コンディションは完全にウエット。小林はペースを上げられず、50号車フェラーリのみならず、GT3クラスのマシンにも抜かれてしまうほど苦労した。

 小林はたまらずピットインして、ウエットタイヤに交換。6号車ポルシェもこれに倣った。その一方で3台のフェラーリはステイアウトしてドライタイヤで走り続けることを選んだが……これが大いなる過ちだった。

 ウエットタイヤに装着したマシンは、ドライタイヤを履き続けるフェラーリ勢よりも1周あたり数秒速い状況であった。フェラーリ勢もたまらずウエットタイヤに履き替えるも、時すでに遅し。上位勢に大きく引き離されることとなった。

 レース終盤、各車がドライタイヤに履き替える中、51号車フェラーリは今度はウエットタイヤで走り続けるというギャンブルに出たが、これが功を奏することはなかった。

 小林がドライブする7号車トヨタは先頭をキープ。後方からは6号車ポルシェが迫ったが、セーフティカー中にオーバーテイクしたとして5秒のタイム加算ペナルティが科されることとなり、逆転の可能性は潰えた。

 結局7号車トヨタが優勝。予選までは苦労していたが、決勝でのレースペースの良さと好判断で取り返した格好だ。

 小林はレース後、「我々はこの週末最速ではありませんでしたが、チームが素晴らしい仕事をしてくれました」と勝利を喜んだ。

 7秒差の2位には6号車ポルシェ、3位には5号車ポルシェが入った。フェラーリ勢は、50号車の4位が最上位。予選ではトップ3を独占しながらも、地元の気まぐれな天候に翻弄された格好だ。トヨタのもう1台、8号車が5位だった。

 GT3クラスは、BMW M4 GT3を走らせたTEAM WRTが1-2フィニッシュを達成。31号車(ダレン・ルング/ショーン・ゲラエル/アウグスト・ファーフス)組が優勝した。2位は、バレンティーノ・ロッシがドライブする46号車。ロッシがオーナーであるVR46からMotoGPに参戦するマルコ・ベッツェッキも応援に駆けつけた。