WEC(世界耐久選手権)第2戦イモラをトヨタの7号車GR010ハイブリッド(小林可夢偉/ニック・デ・フリーズ/マイク・コンウェイ組)が制したが、TOYOTA GAZOO Racingヨーロッパのテクニカルディレクターであるデビッド・フローリーは、冷静な姿勢を崩していない。

 フローリーは、今回の勝利について次のように語った。

「今回のレースは純粋なペースではなく、タイヤの判断で決まったレースだったから、我々は興奮しすぎるべきではないと思う」

「純粋なペースをファステストラップタイムで見れば、フェラーリのほうがコンマ4秒速かった。最速でなくても戦略とチームの実行力で勝てたのだ」

 フェラーリは雨が降るまで4時間近くレースをリードしたが、雨が強まる中でウエットタイヤへの交換が遅れたために主導権を失った。

 フェラーリはレース後、天気予報の解釈を誤ったとして戦術的なミスを認めた上、ファクトリーの2台が戦略を分担する計画だったものの、コミュニケーション上の問題でそれが実行されなかったとも明かした。

 一方トヨタ7号車は、終盤2時間のドライブを小林が担当。ケビン・エストレがステアリングを握るポルシェ6号車からの挑戦をかわすと同時に、最後にスプラッシュのピットインをせずに済むよう、極端に燃料を節約しなければならなかった。

 フローリーは、トヨタの勝利を決定づけた小林のドライブに賛辞を送った。

「最終スティントをスタートしたときは、どうやって管理しようかと頭を悩ませていたんだ」

「チームは完璧に仕事をこなし、可夢偉は最後に素晴らしい走りを見せた」

 3月のWEC開幕戦カタールで、トヨタは優勝したポルシェに1周差をつけられた。イモラでは性能調整(BoP)によって勢力図が変わったが、フローリーはハイパーカークラスにおける調整はまだ完全ではないと考えているとほのめかした。

 フローリーは予選後、499PとGR010のトップスピードの5〜6km/hの差を「BoPの世界では大きい」と表現し、レース後にはフェラーリが「視界から消えた」と示唆した。

 今年のWECのハイパーカー・クラスでは、ストレートでのマシンのパフォーマンス・プロファイルを平準化することを目的に”パワーゲイン”と呼ばれるBoPの新要素が導入されることになっている。

 このシステムはカタール・プロローグ前のテストでいくつかのメーカーによって試され、イモラでの導入が目指されていたが、実現はしなかった。

 WECを共同で運営するFIAとACO(フランス西部自動車クラブ)は、このシステムがいつ導入されるかをまだマニュファクチャラーに明らかにしていない。このシステムの有無、どう適用されるかが、5月のスパや6月のル・マン24時間の結果を大きく左右しそうだ。