マルティンシクーロからファーノまで193kmの丘陵ステージ、逃げ切り勝利の可能性のあるコースレイアウト、立ちはだかる10の起伏は確実に勝負所を演出する。オフィシャルスタートで飛び出したのはダーフィット・デッケル(アルケア・B&Bホテルズ)、しかしすぐに小集団に飲み込まれた。

ジロエクスプレスが並走する中、抜け出しと吸収を繰り返しジョナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアーズ)、クリスティアン・スカローニ(アスタナカザクスタン)、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)、ミルコ・マエストリ(ポルティ・コメタ)、バンジャマン・トマ(コフィディス)、エウェン・コステュー(アルケア・B&Bホテルズ)、サイモン・クラーク(イスラエル・プレミアテック)、マイケル・ヘップバーン(ジェイコ・アルウラー)、エドアルド・アッフィニ(ヴィスマ・リースアバイク)のグループが先行、10人程度のグループが30秒ほどの後方から追いかける。

平坦部分が終わり無印峠に入った残り距離126kmでアラフィリップがペースアップ、マエストリだけがついていく。タイム差は30秒程度、背後には17選手と19選手の2つの大きな追走グループ。中間スプリントポイントや山岳ポイントはマエストリに譲るアラフィリップ、マエストリが上りでペースが落ちると声をかけこの逃避行を長く成立させるべく動いている。追走グループから飛び出すスカローニとコステューはコステューのメカトラで勢いをうしない、フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)がナルバエスを第1追走のスカローニのところまで押し上げる、先頭を走る2人はまだ1分40秒先行、レースが始まってから3時間の平均時速は驚異の47.389km/h。

フィニッシュ手前11.5km、モンテ・ジオーヴェでアラフィリップはマエストリを置き去り独走を開始、急勾配区間で追走はクインテン・ヘルマンス(アルペシン・ドゥクーニンク)とナルバエスが抜け出し50秒先行するアラフィリップを追う。峠から海沿いの海抜0mまで下りテクニカルな市街地を単騎で駆け抜け、後続に31秒の差を保ってフィニッシュラインへ飛び込んだ、レース全体の平均時速46.8km/h。アラフィリップは三大ツールで区間を制した史上109人目の選手。マリアローザ・グループは5分25秒後に集団フィニッシュ、総合勢に変動はなかった。

「チームメートが最初の60kmを完璧にコントロールしてくれたおかげ、マエストリとの協調は素晴らしく彼も勝利に値する。いつも支えてくれるチーム、妻、息子に感謝している」アラフィリップ、ステージ勝利後インタビュー

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JP 0:17 / 5:08 【ハイライト】ジロ・デ・イタリア 第12ステージ|Cycle*2024

ステージ順位
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス/スーダル・クイックステップ)in 4h 07' 44''
2 ジョナタン・ナルバエス(エクアドル/イネオス・グレナディアーズ)+ 00' 31''
3 クインテン・ヘルマンス(ベルギー/アルペシン・ドゥクーニンク)+ 00' 32''
4 ミケル・ヴァルグレン(デンマーク/EFエデュケーション・イージーポスト)+ 00' 43''
5 クリスティアン・スカローニ(イタリア/アスタナカザクスタン),,
6 マッテオ・トレンティン(イタリア/チューダープロサイクリングチーム)+ 01' 30''
7 サイモン・クラーク(オーストラリア/イスラエル・プレミアテック),,
8 ハイス・レイムライゼ(オランダ/dsmフィルメニッヒ・ポストNL),,
9 ミルコ・マエストリ(イタリア/ポルティ・コメタ),,
10 バンジャマン・トマ(フランス/コフィディス),,

個人総合順位
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)in 45h 22' 35''
2 ダニエル・マルティネス(コロンビア/ボーラ・ハンスグローエ)+ 02' 40''
3 ゲラント・トーマス(イギリス/イネオス・グレナディアーズ)+ 02' 56''
4 ベン・オコーナー(オーストラリア/デカトロン・AG2Rラモンディアル)+ 03' 39''
5 アントニオ・ティベーリ(イタリア/バーレーン・ヴィクトリアス)+ 04' 27''
6 ロマン・バルデ(フランス/dsmフィルメニッヒ・ポストNL)+ 04' 57''
7 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア/アスタナカザクスタン)+ 05' 19''
8 フィリッポ・ザナ(イタリア/ジェイコ・アルウラー)+ 05' 23''
9 エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア/モビスター)+ 05' 28''
10 テイメン・アレンスマン(オランダ/イネオス・グレナディアーズ)+ 05' 52''

ポイント賞
1 ジョナサン・ミラン(イタリア/リドル・トレック)229 Pts
2 カーデン・グローブス(オーストラリア/アルペシン・ドゥクーニンク)166 Pts
3 ティム・メルリール(ベルギー/スーダル・クイックステップ)92 Pts

山岳賞
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)104 Pts
2 シモン・ゲシュケ(ドイツ/コフィディス)59 Pts
3 ヴァランタン・パレパントル(フランス/デカトロン・AG2Rラモンディアル)55 Pts

ヤングライダー賞
1 アントニオ・ティベーリ(イタリア/バーレーン・ヴィクトリアス)in 45h 27' 02''
2 フィリッポ・ザナ(イタリア/ジェイコ・アルウラー)+ 00' 56''
3 テイメン・アレンスマン(オランダ/イネオス・グレナディアーズ)+ 01' 25''

チーム総合順位
1 デカトロン・AG2Rラモンディアル(フランス)in 136h 21' 48''
2 イネオス・グレナディアーズ(イギリス)+ 02' 13''
3 ボーラ・ハンスグローエ (ドイツ)+ 20' 31''

リタイア
144 ファビオ・ヤコブセン(オランダ/フィルメニッヒ・ポストNL)

5月17日(金) 第13ステージ
リッチョーネ > チェント
179 km(平坦 ★☆☆☆☆/獲得標高 150 m)
今大会で最もフラットなステージ、獲得標高150m

獲得標高150m。2024年ジロで最もフラットなステージがやって来た。次のスプリント機会は約1週間後。マリア・チクラミーノ争いの希望を先につなげるためにも、これほどの好機を、スプリンターたちは絶対に逃したくない。

小さな副賞たち……いわゆるフーガ賞や中間ポイント賞、インテルジロ賞のおかげで、たとえこんな日でも、前方へと逃げ出す選手はいるのだろう。アドリア海岸のリッチョーネを走り出すと、道は退屈なほどに平坦だ。スタートから7km前後で、20年前にマルコ・パンターニが没したリミニを通過するけれど、稀代の山岳王を悼むための山岳ポイントなど一切存在しない。

開催委員会が喚起する唯一の注意点は、市街地特有の道路事情。直線の多い道路をハイスピードで突き進むプロトンにとって、中央分離帯やスピードバンプは、時に凶器となる。

最後の最後まで徹底的にど平坦。ラスト2km、リーノ川にかかる橋はわずかながら弓なりに膨らんでいるが、プロトンの勢いが削がれることはないだろう。むしろ直後に訪れる3つの小さな直角カーブと、ラスト1.5kmからの緩やかにS字を描くようなコーナーが、スリリングな争いを演出してくれるに違いない。

チェントでフィニッシュが争われるのは、1995年以来2回目。29年前はマリオ・チポッリーニが先頭でラインを切ったものの、降格処分を受けた。今度こそは問題のないスプリントと、晴れやかな勝者の誕生を見届けたい。

ステージ詳細テキスト:宮本あさか