自身の脚だけの結果が刻み込まれる31.2kmの起伏のない個人タイムトライアル、晴天に恵まれたガルダ湖のほとりで総合勢は時間を落としてはいけない。3番出走のヨセフ・チェルニー(スーダル・クイックステップ)が36分58秒で最初にフィニッシュを迎えた、しかしスペシャリストの出走が続いたためマキシミリアン・ヴァルシャイド(ジェイコ・アルウラー)36分50秒、ダーン・ホーレ(リドル・トレック)36分41秒、ほぼ地元のエドアルド・アッフィニ(ヴィスマ・リースアバイク)36分32秒、と立て続けにトップタイムが更新された。

56番出走イタリアチャンピオンジャージを纏ったフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)が登場、沿道からひときわ大きな歓声を受けながら区間優勝だけを目指す。ガンナは昨年のブエルタ・ア・エスパーニャの個人タイムトライアルから256日間勝利がなく、元世界チャンピオンでタイムトライアルのスペシャリストとして平坦路での敗北は許されない。第1計測ポイントは13秒、第2計測ポイントは59秒更新しフィニッシュタイムは35分02秒(-1分26秒)、暫定トップに躍り出た。

ルーク・プラップ(ジェイコ・アルウラー)は快走を見せ36分20秒暫定2位、第7ステージで区間3位だったマグナス・シェフィールド(イネオス・グレナディアーズ)はコーナーで落車、36分37秒暫定7位とふるわなかった。第7ステージ区間4位テイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアーズ)は36分09秒、プラップをぬいて暫定2位へ。ベン・オコーナー(デカトロン・AG2Rラモンディアル)も素晴らしい走りで 36分27秒暫定5位、総合勢の中では一際タイムがよかった。

総合3位につけるゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)はTT巧者らしく36分16秒暫定3位、総合2位ダニエル・マルティネス(ボーラ・ハンスグローエ)は36分47秒暫定13位、トーマスとの総合順位が入れ替わった。最終出走マリア・ローザ着用のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)は第1計測ポイントで最速タイムを叩き出したものの、少しづつガンナのタイムから離れて35分31秒(+29秒)で区間2位だった。

「今日はとても苦しんだけど母国のレースで勝つのは特別だ、ここはモンティキアーリ・ヴェロドロームにも近く第二の故郷なんだ」ガンナ、ステージ勝利後インタビュー

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】ジロ・デ・イタリア 第14ステージ|Cycle*2024

ステージ順位
1 フィリッポ・ガンナ(イタリア/イネオス・グレナディアーズ)in 35' 02''
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)+ 00' 29''
3 テイメン・アレンスマン(オランダ/イネオス・グレナディアーズ)+ 01' 07''
4 ゲラント・トーマス(イギリス/イネオス・グレナディアーズ)+ 01' 14''
5 ルーク・プラップ(オーストラリア/ジェイコ・アルウラー)+ 01' 18''
6 アントニオ・ティベーリ(イタリア/バーレーン・ヴィクトリアス)+ 01' 19''
7 ベン・オコーナー(オーストラリア/デカトロン・AG2Rラモンディアル)+ 01' 25''
8 トビアス・フォス(ノルウェー/イネオス・グレナディアーズ)+ 01' 26''
9 ミッケル・ビョーグ(デンマーク/UAEチームエミレーツ)+ 01' 28''
10 エドアルド・アッフィニ(イタリア/ヴィスマ・リースアバイク)+ 01' 30''

個人総合順位
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)in 50h 00' 09''
2 ゲラント・トーマス(イギリス/イネオス・グレナディアーズ)+ 03' 41''
3 ダニエル・マルティネス(コロンビア/ボーラ・ハンスグローエ)+ 03' 56''
4 ベン・オコーナー(オーストラリア/デカトロン・AG2Rラモンディアル)+ 04' 35''
5 アントニオ・ティベーリ(イタリア/バーレーン・ヴィクトリアス)+ 05' 17''
6 テイメン・アレンスマン(オランダ/イネオス・グレナディアーズ)+ 06' 30''
7 フィリッポ・ザナ(イタリア/ジェイコ・アルウラー)+ 07' 26''
8 ロマン・バルデ(フランス/dsmフィルメニッヒ・ポストNL)+ 07' 52''
9 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア/アスタナカザクスタン)+ 08' 40''
10 アレックス・ボーダン(フランス/デカトロン・AG2Rラモンディアル)+ 08' 56''

ポイント賞
1 ジョナサン・ミラン(イタリア/リドル・トレック)284 Pts
2 カーデン・グローブス(オーストラリア/アルペシン・ドゥクーニンク)174 Pts
3 ティム・メルリール(ベルギー/スーダル・クイックステップ)93 Pts

山岳賞
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)104 Pts
2 シモン・ゲシュケ(ドイツ/コフィディス)59 Pts
3 ヴァランタン・パレパントル(フランス/デカトロン・AG2Rラモンディアル)55 Pts

ヤングライダー賞
1 アントニオ・ティベーリ(イタリア/バーレーン・ヴィクトリアス)in 50h 05' 26''
2 テイメン・アレンスマン(オランダ/イネオス・グレナディアーズ)+ 01' 13''
3 フィリッポ・ザナ(イタリア/ジェイコ・アルウラー)+ 02' 09''

チーム総合順位
1 イネオス・グレナディアーズ(イギリス)in 150h 17' 37''
2 デカトロン・AG2Rラモンディアル(フランス)+ 02' 09''
3 ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)+ 22' 21''

リタイア
213 フィル・バウハウス(ドイツ/バーレーン・ヴィクトリアス)
155 ルカ・メズゲッツ(スロベニア/ジェイコ・アルウラー)

5月19日(日) 第15ステージ
マネルバ・デル・ガルダ > リヴィーニョ
222 km(山岳 ★★★★★/獲得標高 5400 m)
大会最長222km、5つの峠で獲得標高5400m!

2回目の休息日を翌日に控え、マリア・ローザ候補たちに、無謀なまでの試練が与えられる。大会最長222kmのコース上には5つの峠が立ちはだかり、獲得標高は今大会最多5400mにも達する。しかも、走れば走るほど、難度はクレシェンド。1日の終わりには、標高2385mの高みで、今大会最高標高フィニッシュを争う!

2024年ジロ最難関ステージは、前日に個人TTを争ったガルダ湖のほとりで幕を開ける。3級と2級を立て続けにこなすステージ前半から、容赦なくふるい分けは進むだろう。中盤は仕切り直しの時間か。はたまた恐ろしいチェイスの舞台か。カモニカ渓谷に引かれた一本道は、わずかではあるものの、確実に上っている。たっぷり60kmかけて、標高と緊張感もじわじわと高めていく。

そしてラスト80kmの凄まじい打ち合いへ。まずは30年前にマルコ・パンターニに栄光へ向かって飛翔した1級山岳パッソ・デル・モルティローロが、マリア・ローザ候補に試練を与える。ただ使用されるのは厳しい北西側ではなく、比較的易しい南側(登坂距離12.6km、平均勾配7.6%、最大16%)。逆に下りが平均8%超の急坂で、神経質なヘアピンカーブが多発する。

締めは1級山岳パッソ・ディ・フォスカーニョ(14.6km、6.5%)と、1級山岳リヴィーニョ(4.7km、7.6%)の連続登坂。フォスカーニョは決してクレイジーな山ではない。上り始めに最大12%ゾーンが待ち受けるが、その後はほぼ一定の勾配が延々続く。忘れてはならないのは、上りラスト5kmで標高2000mを超えること。山頂から約4kmの急降下と、最終1級リヴィーニョ登坂もまた、すべては標高2000m以上で繰り広げられる。

だからこそリヴィーニョ高地トレーニングの地として名を馳せるのだが、意外にも、ジロ本体とは馴染みが薄い。1972年にエディ・メルクスがこの地で名を轟かせて以来、ピンクの一行が立ち寄るのはたったの2回目。また前回2005年もフォスカーニョ→リヴィーニョのセット登坂が取り入れられたが、実は今年のラスト1.85km地点まで上った後、リヴィーニョの町へ下ってのフィニッシュだった。

そのラスト1.85kmこそ、つまり今ステージ最大の売りなのだ。スキー場のスロープに描かれた道なき道。平均勾配は突如として9.8%に跳ね上がる、残り1kmの前後には、500mにわたって、12.7%・最大19%ゾーンの激勾配ゾーンさえ待っている。しかもフィニッシュの瞬間まで、勾配は決して緩まない。

ステージ詳細テキスト:宮本あさか