あり得ない空間構造の「だまし絵」の作品で知られるオランダの版画家、マウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898〜1972年)の企画展「エッシャー 不思議のヒミツ」が27日、富山県美術館で開幕した。錯視を利用した代表作や体験型の展示が並び、多くの美術ファンや家族連れが驚きながらじっくり楽しんでいた。6月30日まで。北日本新聞創刊140周年記念事業。

 数学構造を取り入れた緻密な作品を生み出したエッシャーは「奇想の天才」「視覚の魔術師」と呼ばれる。会場では、イタリアの風景を描いた初期の作品、図形で平面を覆い尽くすテセレーション(敷き詰め)、幾何学的なパラドックス(逆説)といったテーマに沿って約160点を紹介している。

 滑川高校美術部で部長を務める森美結さん(16)は「作品のストーリーを考えながら鑑賞するのが楽しかった」と充実した様子。体験型展示のコーナーでは、一緒に訪れた部員と写真を撮り合っていた。

 東京から家族3人で来館した伊田桃子さん(38)は、幅約3・9メートルの大作「メタモルフォーゼII」に見入った。蜂が魚へ、さらに鳥へとモチーフが徐々に変化していく様子に「不思議な世界に取り込まれるよう」と話した。

 期間中、色紙を敷き詰めてオリジナルのうちわを作るワークショップも開く。母親と訪れた富山市の加野湊斗君(4)は、六角形の色紙を台紙いっぱいに貼り付け「楽しい」と笑顔を浮かべた。

 県美術館と北日本新聞社でつくる実行委員会など主催。