クマ遭遇防止の手がかりは空気中に―。全国でツキノワグマによる被害が相次ぐ中、広島大大学院の研究チームが、空気中に漂うクマの「環境DNA」を分析する手法を開発した。

 チームを率いる西堀正英教授(動物遺伝学)は「クマの出没が予測できれば、被害防止にも役立つ」と実用化を目指す。(共同通信=小作真世)

 環境DNAは海水や土壌などに含まれる、ふんや分泌物といった生物由来の遺伝情報だ。主に水中や土の中にどのくらいの密度で生物が生息するかを推定するのに活用されている。

 チームは空気に含まれる環境DNAに着目し、2021年に装置を開発した。空気を採取し、ツキノワグマの環境DNAを検出・分析する手法を確立した。

 広島市安佐動物公園との共同研究で、ツキノワグマ3頭がいる飼育舎から離れるにつれてDNAの検出量が減ると実証した。さらに、DNAより空気中に残る時間が短いリボ核酸(RNA)を同時に分析し、クマが出没した場所や時間を絞り込むことを可能にした。

 クマによる人的被害の増加を受け、環境省は捕獲を国が支援する「指定管理鳥獣」にクマを追加すると決めた。

 生息状況の調査が重要とされており、西堀教授は「行政との連携を強化し、貢献したい」と意気込む。

 チームでは、クマの生息を裏付けるため、ふんなどを採取してDNAを分析を試みた。個体の判別に取り組み、出没予測マップの作成も目指す。

 メンバーの増田和志さん(23)は「DNAという目に見えないものからクマの姿が分かるのが面白い。役に立てれば」と話した。