「おれを、弟子にしてくんちぇ!」──。第42話(11月28日放送)で突如スズ子(趣里)の前に現れ、弟・六郎(黒崎煌代)の死や戦争中の興行の激減など、スズ子にとって苦難の日々を付き人として側で支えてきた小夜(富田望生)が、自分の道を見つけた。

1月19日放送の『ブギウギ』(NHK総合)第76話で、小夜は米兵のサム(ジャック・ケネディ)からのプロポーズを受け、ともにアメリカへと旅立っていった。スズ子と小夜の別れのエピソードについて、制作統括の福岡利武さんに聞いた。

■「互いに気づきを与えて、新境地へと踏み出した」スズ子と小夜

スズ子と小夜の涙の別れのシーンについて福岡さんは、「趣里さん、富田望生さん、(愛助役の)水上恒司さん、ジャック・ケネディさんの4人がとにかく和気藹々としていて、裏ではとても楽しそうに、リラックスしていました。16週のスズ子と小夜はとにかく泣いたり怒ったり、びっくりしたり喜んだりと、感情が忙しい。別れのシーンはその感情の振れ幅のピークで、とても難しいシーンでしたが、4人の関係性が出来上がったなか、いい緊張感で、とても前向きで気持ちのよい出発のシーンが撮れました」と振りかえった。

また、16週の週タイトル「ワテはワテだす」にこめた思いについて聞くと、「僕は最初『コペカチータ』(76話で初披露したスズ子の新曲のタイトル)がいいのでは、と提案したのですが、誰も乗ってこなくて(笑)、この週タイトルになりました。自分が『何者でもなかった』と泣いていた小夜が、スズ子から『小夜ちゃんは小夜ちゃんや』と背中を押される。そしてまた小夜も、『スズ子さんはスズ子さんだ』とスズ子の背中を押す。互いに気づきを与えて気づかされて、自分を信じて新境地へと踏み出す今週のエピソードが、よく表れているのではないかと思います」と語った。

■ ブギウギは「家族になる」というのがひとつのテーマ

小夜が登場した第9週から、アメリカに旅立つ第16週まで、エピソードとしては8週のあいだ苦楽をともにしてきたスズ子と小夜。ふたりの関係性について福岡さんは、こう語る。

「『ブギウギ』という作品を通して、『家族になる』というのがひとつのテーマ。血が繋がっていなくても、他人どうしでも、信頼できて、愛することができて、家族のようになれるんだということを描きたいと思いました。スズ子はもらい子ではありましたが、花田の両親からたくさんの愛情を受けて、大人になったあともいろんな人を家族のようにとらえる人に育った。そんなスズ子が、持ち前の『おせっかい』を発揮して、これからも周りの人をどんどん『家族』にしていきます。スズ子と小夜の別れのシーンは、ふたりの『家族』としての関係の積み重ねの結果かなと思います」。

また、撮影を通じて仲良くなったという趣里と富田望生について、「おふたりが本当に仲良くなっていったことがすべて、という感じがします。スズ子と小夜の別れのシーンも、『こうしようね、ああしようね』みたいな打ち合わせはなく、『言わずもがな』というか。お互いにやりたいようにやるんだけれど、ちゃんと響き合う。おふたりとも、とてもいいお芝居をしてくださいました」と、感慨深げに語った。

76話のラストシーンでは、村山興業社長秘書室長・矢崎(三浦誠己)から、愛助(水上恒司)との結婚の条件は歌手を辞めることだと告げられてしまったスズ子。次週第17週「ほんまに離れとうない」ではさらに波乱の展開が待っていそうだ。

取材・文/佐野華英