自営業の人は国民年金のみの加入が基本ですが、それだけでは老後は不安だと言われています。今回は人気メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、国民年金期間が主の人は将来いくら年金を貰えるのか、詳しく計算して紹介しています。

国民年金のみの期間が全体の期間に占める割合が多い人の年金額

年金には国民年金と厚生年金がありますが、自営業者は基本的には国民年金のみの加入で、サラリーマンや公務員は厚生年金に加入しています。

この両者の年金は別物という感覚はありますが、厚生年金に加入している人は20歳から60歳までは国民年金にも加入している状態であり、厚生年金のみ加入してた人も将来は65歳になると国民年金からの給付である老齢基礎年金を受給する事になります。

また、国民年金は加入期間に比例する年金であり、厚生年金は過去の給与記録に比例する年金のため計算する時は全く違うものになります。

厚生年金に加入していた人は加入期間に比例する年金である国民年金と、過去の給与に比例した年金である厚生年金を受給する事ができるのでサラリーマンや公務員期間が長かった人は比較的手厚い年金を受給する事ができます。

しかし、自営業者などの人は国民年金のみの期間が長かった人は将来は老齢基礎年金のみしかもらえない事になるため、低額の年金になりがちであります。

よって、国民年金のみの人は将来の保障を手厚くするためにも、民間にあるような年金商品や貯蓄などをしておく必要が高いともいえます。

今回はその国民年金期間が主な人の将来の給付額がどのくらいなのかを計算してみましょう。

1.全体で国民年金第1号被保険者期間が多くを占めてる人の年金額。

◯昭和34年4月12日生まれのA男さん(令和6年に65歳になる人)

・1度マスターしてしまうと便利!(令和6年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方(令和6年版)。

18歳年度末の昭和53年4月から昭和55年6月までの27ヶ月は厚生年金に加入する。この期間の平均標準報酬月額は30万円とします(年金計算の際に過去の給与を現在価値に直す再評価済み)。

(20歳になると国民年金にも強制加入となるため、昭和54年4月から昭和55年6月までの15ヶ月間が老齢基礎年金に反映。なお、昭和61年3月までの旧年金時代の期間は厚年加入者は国民年金同時加入ではなかったですが、昭和61年4月からの法改正で過去の厚年期間や共済期間は国民年金同時加入期間とみなしています)

退職して昭和55年7月からは親の個人商店で働くようになったため、国民年金に加入する。平成9年10月までの208ヶ月間は国民年金保険料を納付。

事業が倒産し、国民年金保険料を支払うのが困難になったため平成9年11月から平成13年6月までの44ヶ月間は国民年金保険料を全額免除(平成21年3月までの免除は老齢基礎年金の3分の1に反映)。

平成13年7月から平成14年3月までの9ヶ月は未納。

平成14年4月から平成18年6月までの51ヶ月間は半額免除(平成21年3月までの期間は老齢基礎年金の3分の2に反映)。

ちなみに半額免除は平成14年4月から導入されました(4分の1免除や4分の3免除は平成18年7月から導入)。

半額免除なので、残り半額は保険料を納めないと免除期間とは認められず、保険料納付の時効である半額納付しないと単なる未納期間になる。

余談ですが、平成19年6月にA男さんは過去の免除期間に対しての保険料を支払う事にしたため、平成19年6月から10年間の時効以内である平成9年6月以降の免除期間を追納したとします。

過去の免除期間を追納する場合は一番古い期間から納めないといけません(時効に引っかかるのを防ぐため)。

ーーーー
※追納期間
平成13年7月から平成14年3月までの9ヶ月の期間は通常の未納期間なので時効は2年であり、この9ヶ月は平成19年6月から見て時効の2年を過ぎているので納付は不可。免除期間の納付(追納)は10年の時効。

よってその9ヶ月を除く、平成9年11月〜平成16年7月までの81ヶ月のうち72ヶ月追納。

この72ヶ月間は保険料納付済み期間となります。半額免除期間は平成16年8月から平成18年6月までの23ヶ月に短縮。
ーーーー

平成18年7月から平成27年12月までの114ヶ月間は国民年金保険料を納付しました。

平成28年1月から60歳前月の平成31年3月までの39ヶ月間は国民年金全額免除としました(平成21年4月以降の全額免除期間は老齢基礎年金の2分の1に反映)。

さて、A男さんは60歳を迎えた後は国民年金保険料を納付する義務はなくなり、65歳までは国民年金からの老齢基礎年金は受給できませんが生年月日を見てみると64歳からは27ヶ月分の厚生年金は受給できます(計算は割愛します)。

※厚生年金受給開始年齢(日本年金機構)

なお、60歳以上で全体の受給資格期間が10年以上あれば、65歳にならなくても年金の繰上げで年金を受給する事はできます(1ヶ月早く貰うごとに0.5%減額。昭和37年4月2日以降生まれの人は0.4%減額)。A男さんは繰上げしないとします。


A男さんの国民年金の年金記録をまとめます。
20歳から60歳までの期間で計算。

・20歳以降の昭和54年4月から昭和55年6月までの厚年期間→15ヶ月

・昭和55年7月から平成9年10月までの国民年金保険料納付→208ヶ月

・平成9年11月から平成13年6月までの全額免除(追納済み)→44ヶ月

・未納→9ヶ月

・平成14年4月から平成16年7月までの半額免除(追納済み)→28ヶ月

・平成16年8月から平成18年6月まで半額免除→23ヶ月(この期間は老齢基礎年金の3分の2に反映)

・平成18年7月から平成27年12月までは国年納付→114ヶ月

・平成28年1月から平成31年3月までは全額免除→39ヶ月(老齢基礎年金の2分の1に反映)

さて、令和6年4月11日に65歳を迎えるA男さんはいくらの年金になるでしょうか。

ちなみに免除期間は過去10年以内であれば追納して年金額を増やす事ができますので、A男さんは65歳到達時に平成28年1月から平成31年3月までの全額免除期間を追納したいと思いました。

この場合は確かに65歳到達時から見て10年以内なので追納対象ですが、65歳に到達する令和6年4月11日に到達以降は追納不可になりますので、追納はできなかったものとします。追納がしたい人は65歳到達する前にやりましょう。

よって、この期間で年金額を計算します。

◯老齢基礎年金→816,000円(令和6年度に67歳までの人の基礎年金満額)÷480ヶ月×(厚年15ヶ月+国年納付322ヶ月+追納72ヶ月+半額免除23ヶ月÷3×2+全額免除39ヶ月÷2)=816,000円÷480ヶ月×443.833ヶ月(小数点3位未満四捨五入)=754,516円(1円未満四捨五入)

◯老齢厚生年金(報酬比例部分)→30万円×7.125÷1000×27ヶ月=57,713円

◯老齢厚生年金(差額加算)→1,701円(令和6年度定額単価。67歳までの人)×27ヶ月ー816,000円÷480ヶ月×15ヶ月(20歳から60歳までの厚年期間)=45,927円ー25,500円=20,427円

ーーーー
※簡単に補足
従来(昭和61年3月31日まで)の厚生年金の加入比例する年金であった定額部分は20歳から60歳までという制限はなく全体で計算してましたが、新法(昭和61年4月1日以降)からは定額部分が廃止されて加入比例の年金は国民年金から給付する事になりました。

ところが、国民年金からの老齢基礎年金は20歳から60歳までの厚年期間しか使わないので従来の年金との差が出てしまいます。
よって従来のやり方よりも年金が低くならないように、その差を埋めるための年金が差額加算。
ーーーー

よって、A男さんの年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分57,713円+差額加算20,427円)+老齢基礎年金754,516円=832,656円(月額69,388円)

他に配偶者(妻)に配偶者加給年金が付いていた場合は、A男さんの生年月日に応じた振替加算27,444円がA男さんが65歳以降に加算される場合はあります(厚年期間が20年以上なくて、昭和41年4月1日以前生まれだから)。

例えばA男さんの妻が2歳年下で、現在は63歳で65歳から配偶者加給年金が付くとします。そうするとA男さんが67歳になる時に振替加算がA男さんの老齢基礎年金に加算されます。

※追記
今回は計算してませんが、65歳以上で、住民税非課税世帯の場合で、前年所得+公的年金収入が778,900円〜878,900円(令和5年10月から令和6年9月までの所得基準)の場合は年金生活者支援給付金が支給される場合があります。

あと、平成21年3月以前である平成16年8月から平成18年6月までの半額免除期間がどうして老齢基礎年金の3分の二になるのか。

これは平成21年3月までの国庫負担が3分の1でしたので、残りの3分の2は自分の保険料を払う事になります。

自分が払う保険料分の3分の2をさらに半額免除(2分の1にする)するので、3分の2×2分の1=3分の1

国庫負担3分の1+自分が半額払った3分の1=3分の2の反映となります。

image by: Shutterstock.com

MAG2 NEWS