序盤の奇妙な冒険は伏線?

 尾田栄一郎先生による大人気マンガ『ONE PIECE』は、「週刊少年ジャンプ」での連載が25年を超え、コミックスも100巻を超えている大作です。そんな本作の魅力のひとつには、鮮やかな伏線の回収が挙げられます。しかし、長い連載の前半で登場したにもかかわらず、いまだに回収されていない伏線、謎も多く存在します。長い間回収されていない伏線について振り返ります。

 たとえば、コミックス3巻で登場したガイモンの言葉は長い間ファンから大きな伏線ではないか、と噂されています。ガイモンは珍獣島で登場し、宝箱にハマったまま20年間も島にある宝箱を守り続けている元海賊です。そんなガイモンは珍獣島からルフィたちが出航する際に、「ワンピース(ひとつなぎの大秘宝)はお前が見つけて 世界を買っちまえ」と、意味深な発言をします。このセリフが「明らかに伏線なのでは?」とファンの間では長年話題になっているのです。

「世界を買う」という表現に意味があると考える人も多いようで、ナミとココヤシ村のエピソードとを重ねてワンピースの正体について考察しているファンもいます。ナミはアーロンに支配されていた故郷のココヤシ村を1億ベリーで「買い」、村人を解放したいと考えていました。「1億ベリーでココヤシ村を買って村人を解放させる」ことと、「ワンピースを見つけて世界を買う」という言葉の妙なリンクが、考察の根拠となっているようです。

 ガイモンの言う「ワンピースを見つけて世界を買う」というのは、世界の人びとを天竜人、世界政府の支配から解放するという意味ではないかと考察する意見が見られました。

 前述のナミの出生についても、まだ回収されていない伏線のひとつだと考えられているようです。イーストブルーで麦わらの一味の仲間になったゾロ、ウソップ、サンジの3人は出生や親についてすでに情報が明かされていますが、ナミだけが明らかになっていません。

 ナミの出自について分かっていることといえば、『ONE PIECE』のキャラクターブックである「VIVRECARD〜ONE PIECE図鑑〜」で明かされている「オイコット王国」生まれということと、本編で描かれている戦場でノジコに拾われたことぐらいです。

 そして、近年はシャンクスの幼少期の境遇がナミと似ていることが分かり、彼女の出生に関する予想がされています。シャンクスは映画『ONE PIECE FILM RED』で、「フィガーランド家」と呼ばれる天竜人の血を引いている可能性があることが五老星の口から語られていました。

 また、シャンクスは1歳の時にロックス海賊団が起こしたゴッドバレー事件に巻き込まれており、島に居合わせたロジャーに拾われています。ナミもまた戦場でノジコに拾われており、その境遇はシャンクスとよく似ています。

 このようにシャンクスが天竜人の可能性があることや、境遇の一致から、ナミは「オイコット王国」の王女だったのではないかという考察も見られます。ナミの出生について、明らかになる日はいつ来るのでしょうか。

 また、黒ひげことマーシャル・D・ティーチの正体についても、長年読者が考察している謎がいくつもあります。単行本24巻の初登場時から何かと謎の多い黒ひげは「体の構造が異形」「人の倍生きている」「一度も眠ったことがない」などのキーワードが登場するなど、かなり特殊な体質の持ち主のようです。

 また、黒ひげ海賊団の海賊旗はドクロが3つ描かれているデザインとなっており、初対面時にルフィとゾロは黒ひげひとりを見て「あいつら」という発言をしていました。このことから黒ひげは「ケルベロス」の能力を持っているのではないかという考察もあるようです。

 ケルベロスは頭が3つある神話上の生き物で、黒ひげの海賊旗のデザインと重なります。また、3つある頭が交互に寝るという特性もあり、「一度も眠ったことがない」という黒ひげの特徴と一致します。

 ほかにも、かつてロックス海賊団が拠点にしていたと言われている海賊島ハチノスを黒ひげも拠点にしていることや、海賊船の名前が「サーベルオブジーベック号」であることから、伝説の海賊「ロックス・D・ジーベック」の子孫ではないかという考察もありました。

 唯一悪魔の実をふたつ食べ、シャンクスに傷を付けた黒ひげの謎には特に注目が集まります。ルフィたちと戦う時が来れば明らかになるのでしょうか。