「3回見て3回とも涙が止まらない」最優秀演出賞を贈りたい、珠玉の最終回

 3月も下旬に入り、2024冬アニメが続々と最終回を迎えています。どの作品を最後まで追うか検討している方や、最終回の評判を踏まえてから冬アニメを見始める方もいるのではないでしょうか。そんな方のために、ネット上で「きれいすぎて鳥肌立ったわ」「何度悲鳴を上げたか」と評判の、「最終回が良かった2024冬アニメ」を3作品、みてみましょう。

●『薬屋のひとりごと』第24話「壬氏と猫猫」

 1クール目は、後宮で起こるさまざまな事件を猫猫(まおまお/CV:悠木碧)が解決していき、2クール目は壬氏(じんし/CV:大塚剛央)に身請けされた猫猫が、外廷で活躍を見せていました。最終話では、猫猫の父、羅漢(らかん/CV:桐本拓哉)にスポットライトが当てられます。

 ひとつ前の第23話でその過去が明かされた羅漢は、猫猫との勝負に負けて緑青館(ろくしょうかん)の妓女を身請けすることになります。そこで羅漢は、緑青館の奥にいた猫猫の母、鳳仙(ほうせん/CV:桑島法子)に気付き、彼女を身請けすることにしたのです。

 羅漢が猫猫にもらった枯れた青い薔薇には、「枯れても美しい花」という意味が込められていました。おそらく、「鳳仙は生きている」という意味があったのでしょう。なお、青い薔薇の花言葉は「夢かなう」「奇跡」 であり、羅漢にとっての鳳仙を表していると思われます。

 その後、梅梅(めいめい/CV:潘めぐみ)から猫猫に、美しい布帛(ひれ)が届きます。「私が身請けされる時は、ちゃんと踊るのよ」とのことでしたが、梅梅は猫猫の「両親が結ばれて嬉しい気持ち」を見越して、布帛を贈ったのかもしれません。

 その布帛を身に着け、猫猫は夜中にひとり、「身請けされた妓女を送る舞」を踊りました。複雑な関係ではあったものの、両親の幸せをそっと祝う猫猫の姿に、涙した方もいるのではないでしょうか。その後、様子を見に来た壬氏に「牛黄(ごおう…高級薬)をください」とねだる猫猫は、いつものに笑顔になっていましたが。

 本作は2期の制作も発表され、すでにネット上では期待の声が上がっています。原作者である日向夏さんは「1期の違和感が、2期でおそらく解消されるかと思います 」とコメントしており、ますます期待できそうです。

『薬屋のひとりごと』は、「dアニメストア」「Amazon Prime Video」「U-NEXT」ほか配信サービスで配信されています。

TVアニメ『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』キービジュアル第2弾 (C)雨川透子・オーバーラップ/ループ7回目製作委員会

最後に授かった魔法に「フリーレンの弟子だね(笑)」

●『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』第12話「いちばん美しいもの」

 主人公の公爵令嬢、リーシェ・イルムガルド・ヴェルツナー(CV:長谷川育美)は、毎回20歳で死に、5年前の婚約破棄された場面にループしてしまいます。そのループ7回目の人生を描いているのが本作です。最終回では、これまでのループとはかなり違った結末を迎えます。

 これまでのループで商人や薬師、騎士などさまざまな人生を生き、リーシェは多様なスキルとたくましさを身に付けてきました。3回目の人生で薬学の先生だったミシェル・エヴァン(CV:小野大輔)の怪しい動きに、気付いてしまいます。

 ミシェルは、火薬の力を見せようと、皇都内に火薬を設置し爆破予告をしたのです。しかし、リーシェはミシェルの装置を利用して、火薬を花火に変えます。これまでのループでの経験を生かし、人を不幸にするはずの火薬を、人を幸せにする花火に変えてしまったのです。

「誰かを不幸にするためだけの存在なんて、あるはずがないのです」。ループし続けて、人生に絶望してもおかしくないリーシェが言うからこそ、この言葉には重みが感じられます。そんなリーシェの前向きさやたくましさに、皇太子アルノルト・ハイン(CV:島崎信長)も惚れているのでしょう。

 当初は「長生きしてゴロゴロしたい!」が望みだったリーシェですが、アルノルトという大切な人に気付き、彼と共に未来を切り開きました。そして、「アルノルト殿下と一緒に、美しい世界を見られるよう、未来を変えていきたい」という新たな目標を得たのでした。

 なお、最終回のアルノルトのデレっぷりに、ネット上では「キュン全部盛り」「反則技」との声が上がりました。リーシェが自分で未来を変え、変化を積み重ねていったその先に、さらに美しい未来が開けた希望ある最終回でした。

『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』は、「dアニメストア」「U-NEXT」「Amazon Prime Video」ほか配信サービスで配信されています。

※島崎さんの「崎」は、「大」ではなく「立」が正しい表記

●『葬送のフリーレン』第28話「また会ったときに恥ずかしいからね」

 連続2クール放送を通して、フリーレンとさまざまな人間たちとの交流を描いてきた本作ですが、最終話ではフリーレンの旅がひとつの区切りを迎えます。一級魔法使いの選抜試験を終え、受験者たちと別れたフリーレンたちは、次の目的地へと旅立つことにしたのです。

 まず、一級魔法使いになったフェルンは「服の汚れをきれいさっぱり落とす魔法」を授かりました。師匠であるフリーレンに感性が似てきたのか、「花畑を出す魔法」同様、とても平和な魔法です。また、育ての親であるハイター(CV:東地宏樹)の名前とも、どこか関係がありそうです。

 そして、共に苦境を乗り越えた受験者たちとも、別れる日がやってきます。第1話同様、あっさり彼らと別れるフリーレンですが、最終話ではその理由にも触れています。それは、勇者ヒンメル(CV:岡本信彦)と同じ「また会ったときに恥ずかしいからね」というものでした。

 第1話で初めてヒンメルたちと別れたとき、フリーレンは「100年くらいは中欧諸国をめぐる予定だから、たまには顔を見せるよ」と言っています。老いや死を迎える人間の感覚を、あまり理解していなかったのです。だからこそ、ヒンメルの死を経て「人間を知ろうと思う」と旅立ったのでしょう。

 そのフリーレンが、「また会ったときに恥ずかしいからね」と懐かしそうにつぶやく最後のシーンは、彼女が人間の「また会いたい」「恥ずかしい」という気持ちを、深く理解したことを示しているのでしょう。彼女の成長と旅の区切りを美しく表した、映画のような最終回です。

『葬送のフリーレン』は、「dアニメストア」「Amazon Prime Video」「U-NEXT」ほか配信サービスで配信されています。

※種崎さんの「崎」は、「大」ではなく「立」が正しい表記

* * *

 文字通り「有終の美」を飾ってくれる最終回を見ると、思わず製作陣にお礼を言いたくなりますよね。作画に演出にアニオリにと、製作陣としても特に気合いの入るであろう最終回、まだ見ていない方はぜひご覧ください。

※配信状況は記事掲載時点のものです。